東欧セルビアで2026年10月25日に投開票された議会総選挙で、学生主導の新興中道勢力「学生リスト」が圧勝し、14年ぶりの政権交代が確実となった。与党を率いるアレクサンダル・ヴチッチ前大統領が敗北を認め、長期政権に終止符が打たれる見通しとなったことを、bbc.comやYahoo!ニュースなどが報じた。
総選挙の投票率が過去最高を記録
セルビア選挙管理委員会が発表した速報によると、今回の総選挙では投票率が過去最高を記録した。投票締め切り予定時刻の2時間前にあたる現地時間午後6時までに、有権者の64.9%が投票を済ませたとbbc.comが伝えている。この高い投票率が、反政府を掲げる学生運動に有利に働くと事前に予想されていた。セルビア国内だけでなく、スロヴェニアの首都リュブリャナやドイツのミュンヘン、アメリカのロサンゼルスやシカゴ、フランス・パリの在外投票受付所でも長蛇の列ができ、豪雨の中でおよそ有権者が待機する姿が見られた。
14年間の政権を支えたヴチッチ前大統領が敗北を認める
2012年から実権を握り、長期政権を担ってきたアレクサンダル・ヴチッチ前大統領は同日深夜、首都ベオグラードの党本部で「最終結果はまだ出ていないが、今回の選挙で我々が敗北したことは明らかだ」と述べ、敗北を認めたとbbc.comが報じた。大統領を2期務めたヴチッチ氏は3期目を目指せないため、今回は中道右派与党「セルビア進歩党(SNS)」の首相候補として選挙戦を戦っていた。朝日新聞の報道によると、ヴチッチ氏は「学生リスト」が135から140議席を獲得する見込みだと語る一方で、「(学生リストは)主権国家を倒すために、別の誰かが企てた汚れ仕事を請け負った」と一方的な主張も展開している。

駅舎崩落事故を機に高まった反汚職への不満
政権交代の決定打となったのは、2024年11月に国内第2の都市ノヴィ・サドの中央駅で起きた悲惨な事故だった。駅の屋根が崩落して16人が死亡し、この事故をきっかけに学生や教師、労働者、農家まで幅広い層の市民が参加する抗議活動が1年以上続いていたとbbc.comが伝えている。当初は事故の真相究明と責任者の処罰を求めていたデモ隊は、改修工事に深く関わっていた与党による10年以上の政権運営の腐敗を批判した。Yahoo!ニュースの報道では、国際NGOの調査において同国政権の腐敗度合いが欧州で最悪の水準に沈んでいたことが指摘されている。
明確なリーダーを持たない新興勢力「学生リスト」の躍進
明確なリーダーを持たず、政治経験のないメンバーで構成される「学生リスト」は、医師、俳優、学者、スポーツ選手など社会のあらゆる層から候補者を擁立した。筆頭候補のイリヤ・スルダノヴィッチ氏はBBCセルビア語版の取材に対し、「ここは自由な国家になる」と話し、反汚職運動が「国を専制政治から解放する」ことを望んでいると述べたとbbc.comは伝えている。反汚職を掲げる同勢力は、抗議活動家への弾圧規則を破った役人の政府からの排除や、与党関係者が公営企業を率いることの阻止などを公約に掲げ、中間層にも広く支持を広げた。
ベオグラード市内の祝賀ムードと今後の議席見通し
ヴチッチ氏の敗北宣言を受け、ベオグラード市内の通りは祝賀ムードに包まれた。大勢の市民が踊りながら「勝利!」と叫び、車がクラクションを鳴らし、花火が打ち上げられたとbbc.comは伝えている。朝日新聞によると、「学生リスト」は一院制で定数250の議会において過半数を大きく超える135から140議席を確保する見込みであり、今後は具体的な制度改革の実行や新政権の枠組み作りが焦点となる。