昨季に養殖カキの大量死で大きな被害を受けた瀬戸内海各地で、漁業者や自治体が対策を急いでいる。広島、岡山両県はリスクを通知するアラート制度を導入し、環境改善に向けた海底耕耘も進める。しかし原因は特定されておらず、今月に入り広島県内で再び死滅の情報が入るなど、先行きは不透明なまま11月の水揚げ解禁を迎える。
広島・岡山両県が導入したアラート制度
瀬戸内海でのカキ大量死を受け、広島県は今年から水温や海中の酸素量に基づき、リスクを「注意」「警戒」「厳戒」の3段階で評価して通知するアラート制度を開始した。読売新聞によると、岡山県も今年から海水温や塩分濃度が基準値に達した際に通知する制度を運用している。各地の産地では、環境変化に強い品種への切り替えや、いかだの位置調整など、生育環境を最適化するための試行錯誤が続いている。兵庫県姫路市の漁協では、プランクトンの観測を行い、カキをつるす深さを調整する取り組みも行われている。
海底の環境改善に向けたカキ殻散布
9月29日、広島県東広島市の沖合では、地元漁協の養殖業者10社が参加し、環境改善作業が行われた。2隻の漁船が砕いたカキ殻を散布しながら、海底を耕す「耕運具」を海中に沈めて曳航した。カキ殻には、水質悪化の原因となる硫化水素を吸着する効果があるとされ、海底を耕すことでプランクトンを舞い上げ、酸素を行き渡らせる狙いがある。東広島市などによると、この作業回数は昨年の1回から今年は7~10月の計6回に増やされた。
瀬戸内海が抱える生産量の8割という重責
農林水産省の統計によると、2024年の都道府県別生産量では、広島が63.6%で全国1位となり、宮城、岡山、兵庫、岩手が続く。瀬戸内海沿岸の産地だけで全国生産の約8割を占めており、この海域での被害は日本国内のカキ供給全体に直結する。昨年の大量死では、一部地域で7~9割が死滅する甚大な被害が発生した。農水省が今年5月に公表した速報値では、広島県の昨年7~12月の生産量は前年同期比で半減し、岡山県に至っては約5分の1にまで激減している。
特定されない原因と続く不安な状況
水産庁などは大量死の原因について、高水温に加え、海中の酸素濃度低下や栄養不足といった複合的な要因が絡んでいる可能性を指摘するが、いまだ特定には至っていない。広島県水産課は、県内38の漁協に対する聞き取り調査を9月中旬から週1回実施している。9月中に目立った報告はなかったが、今月に入り呉市や東広島市の中部海域から「6、7割のカキが死んだ」との情報が寄せられた。東広島市の「島村水産」島村広司社長は、「最悪の場合も考えながらやっていくしかない」と現状を語る。
出荷解禁を11月2日以降に延期
広島県の漁協などで作る「広島かき生産対策協議会」は、養殖カキの出荷解禁日を例年より約1か月遅い11月2日以降に設定した。この決定は、今夏も続いた猛暑の影響に加え、昨年の大量死後に仕込んだカキの生育に時間を要している状況を考慮したものだ。同協議会の米田輝隆会長は、「開始日を遅らせることで、身入りの良いしっかりとした状態のカキを出荷したい」と述べた。県担当者は現在の環境データに異常はないとしつつも、今後の漁場の変化を注視する構えだ。
今季の生産量について、漁業関係者の間では減少を避けられないとの懸念が広がっている。水揚げを待たなければ実態が見通せない状況下で、産地は厳しい見極めを迫られている。