セルビアの有権者は25日、長期政権を率いるアレクサンダル・ヴチッチ政権の退陣を求め、大規模な学生主導の野党勢力と現政権が激突するスナップ総選挙の投票を開始した。ロイターやアルジャジーラなどの報道によると、今回の選挙は、2014年以降首相や大統領として10年以上にわたり権力を握ってきたポピュリストのヴチッチ氏に対する、過去10年余りで最大の政治的試練となっている。
投票所は午前7時に開き、午後8時に閉まる予定で、投票終了から約2時間後には最初の得票結果の傾向が判明するとみられている。有権者の関心は非常に高く、都市部では早朝から長い行列ができ、シプラス・メールなどの報道によれば投票開始前から待機する市民の姿も見られた。調査会社CeSIDの発表によると、午前9時時点の投票率は12%に達し、前回の2023年の選挙における同時間帯の2倍以上の水準を記録している。
学生主導の抗議運動と背景
今回の総選挙は、ヴチッチ氏が9月に召集したものである。背景には、2024年にノヴィ・サド市で鉄道駅のコンクリート製ひさしが崩落し16人が死亡した事故がある。フリー・マレーシア・トゥデイが報じたところによると、この悲劇をきっかけとして政府の腐敗や権威主義化に対する批判が高まり、約2年間に及ぶ学生主導の反政府デモへと発展した。
事故が起きた鉄道駅のひさしは、ベオグラードとハンガリーの首都ブダペストを結ぶ路線建設の一環であり、ヴチッチ氏が推進してきた事業であった。デモ参加者らはこれを、腐敗が死を招いた象徴と捉えている。木曜日にはベオグラード中心部で約15万人の学生支持者が集会を開き、政権への圧力を強めた。
選挙の争点と各陣営の主張
学生運動側は「学生リスト」を組織し、250人の候補者を擁立している。候補者には大学教授や俳優、農家らが名を連ね、ノヴィ・サド出身の心臓外科医イリヤ・スルダノヴィッチ氏が率いる。彼らの国内政策の主眼は、汚職の根絶や教育環境の改善であり、法治国家の再建と機関の立て直しを掲げている。

一方、現職のヴチッチ氏が率いるセルビア進歩党(SNS)は、長年にわたり経済の停滞から国を救い、新しい高速道路や鉄道、学校、病院の建設といった近代化を進めた実績をアピールしている。選挙戦においてヴチッチ氏は、年金や公務員給与の引き上げ、医療への投資、若いカップル向けの補助金を公約に掲げた。外交面では、欧州連合(EU)への加盟を目指す一方で、主要な投資国である中国や、伝統的な同盟国であり天然ガスを供給するロシアとの関係維持にも力を入れてきた。
世論調査と今後の見通し
事前の世論調査では大接戦が予想されている。木曜日に公表されたIpsosの調査では、ヴチッチ氏のSNSが47%の支持を集めて優勢とする一方、学生側も40%で追っており、学生側がリードしているとする調査もある。RISKコンサルティング会社Verisk Maplecroftのシニアヨーロッパアナリスト、マリオ・ビカルスキ氏は、「今回のセルビア選挙は、学生リストがヴチッチ氏に対してこれまでにない最大の挑戦を仕掛ける、同国にとっての転換点になりつつある」と指摘している。

投票を終えたスルダノヴィッチ氏は、「今日が民主的な雰囲気の中で平和裏に過ぎ去り、セルビアに新しい政府を合法的に選出できることを願っている」と述べ、近年の歴史の中で記録的な投票率になる可能性を示唆した。