セルビアで25日に行われた議会解散に伴う総選挙で、14年間にわたり権力を握ってきたアレクサンダル・ヴチッチ前大統領の与党「セルビア進歩党」が敗北し、ロイター通信によると、ロシアは4月のハンガリーに続き重要なパートナーを再び失った形となった。.
セルビア議会選で親露派与党が敗北しロシアがパートナーを喪失
旧ユーゴスラビアのセルビアで25日に投開票された議会選で、与党「セルビア進歩党」を率いるヴチッチ前大統領が敗北を宣言した。ヴチッチ氏と盟友関係を築いてきたロシアにとって今回の結果は大きな政治的打撃となる。欧州では4月にも親露派として知られたハンガリーのオルバン前首相が議会選で敗北して失脚しており、ロイター通信はロシアが欧州で重要パートナーをまた1人失ったと伝えていると、産経新聞が報じた。
学生らが主導する新興政治勢力「学生リスト」が過半数を獲得
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの土田陽介主任研究員が執筆し、JBpressが報じたところによると、今回の選挙では、ヴチッチ政権への抗議デモを続けてきた学生らが主導する新興政治勢力「学生リスト」が過半数の議席を獲得する見通しとなった。一方、隣国のボスニア・ヘルツェゴヴィナで行われた総選挙の下院選では民族の権利を主張する政党が躍進し、セルビア人が多く住むスルプスカ共和国では親ロ派の与党が大統領選と議会選で勝利していた。親ロ派の伸長が懸念される地域がある一方で、密接な関係にあるセルビアでは親ロのヴチッチ前大統領が敗北するという対照的な結果となっている。

ロシア側は新政権に対して友好関係の維持を期待
ペスコフ露大統領報道官は26日の会見で、ヴチッチ氏が露セルビア関係の発展に寄与してきたと評価した。その上で、選挙で勝利した「学生リスト」に対し、ロシアとの協力がセルビアの利益になると理解するよう期待するとの考えを示している。また、露外務省のザハロワ報道官も同日、セルビアの新政権がこれまで蓄積されてきたロシアとの前向きな資産を維持することを期待すると表明した。こうしたロシア側の動きの背景には、新政権の対露姿勢が不透明であるという事情があるとみられている。
新政権の対露制裁への姿勢と今後の不透明な政治情勢
ロイターの報道によると、「学生リスト」は議会選に際し、ウクライナ侵略を巡る欧米主導の対露制裁に加わらないと表明している。しかし、セルビア国内では新政権が将来的に対露制裁に乗り出す可能性があるとの観測も出ていると、産経新聞は伝えている。さらに、長期化したヴチッチ政権のもとで政治の実質的な「ヴチッチ化」が進んでおり、経験に乏しい学生リストの指導者たちが持続可能な形で政権を再編し、安定した政治体制を築けるかどうかはまだ見通せない状況にある。
中国企業の欧州向け生産拠点として重要性を増すセルビア
セルビアの選挙結果は一見すると日本から遠い出来事に思えるが、同国は現在の日本企業による対欧州ビジネスを考える上で欠かせない存在となっていると、JBpressが指摘している。セルビアは中国の対欧州ビジネスの拠点となっており、同国北部のヴォイヴォディナ自治州には近年、自動車分野を中心に中国系メーカーの進出が相次いでいる。セルビア政治の安定は、日本を含むさまざまな国がその動向に注目している重要なポイントである。