英紙フィナンシャル・タイムズの記者が南アフリカでイーロン・マスクの父エロル・マスクと4時間にわたり面会し、その複雑な実像が明らかになったとYahoo!ニュースが報じた。極右支持者や陰謀論の傾倒者として知られる一方、強烈な存在感を放つ80歳の素顔に迫る。
海辺の町ランゲバーンで実現した4時間の対話
ケープタウンから北へ車で90分走った風の強い海岸沿いの町ランゲバーンで、英紙記者はエロル・マスクと対面した。南アフリカの冬の寒さの中、赤々と燃える暖炉のそばにあるレストラン「パーリーズ」でインタビューがおこなわれた。エロルは青い瞳でまっすぐ見つめ、「とても良いレストランだね」と声をかけ、明るい話から暗い話まで長々と語り続けた。
ジキルとハイドのような二面性と幼少期のトラウマ
レストランの暖炉の炎に照らされたエロルは、小説の登場人物であるハイド氏を連想させる一方で、親しみやすい笑顔を見せるジキル博士のような二面性を持っていた。イーロン・マスクは伝記作家のウォルター・アイザックソンに対し、父親にはこうした二面性があると語っている。しかしエロル本人は、アイザックソンによる伝記本は間違いだらけだと主張している。また、イーロンは2017年の米ローリング・ストーン誌のインタビューで、父親について「思いつくほぼすべての悪事を、あの人はやってきた」と述べている。
相次ぐ物議と法的な疑惑の全貌
エロルを巡っては、過去の言動や法的疑惑が数多く報じられてきた。エロルは最初の妻メイ・ハルデマンに対する暴力を否定している。しかし、2025年に米ニューヨーク・タイムズ紙が報じた調査報道によれば、エロルには実子や再婚相手の子供5人を性的に虐待した疑いが持たれている。裁判記録や親族へのインタビューを引用した同記事では、1993年に遡る告発や、イーロンが仲裁に入った事例が記されている。これまでに3件の個別の警察捜査が開始され、少なくとも2件は終了しているものの、エロルは刑事上の有罪判決を受けたことはなく、すべての疑惑を全面否定している。
ロシアのフォーラム支援と現在も続く親子関係
エロルはロシアのプーチン大統領や英国の極右活動家トミー・ロビンソンを擁護する立場をとっている。2026年6月に開催された「サンクトペテルブルク国際経済フォーラム」に参加したロビンソンに対しては、エロル自身がその費用を負担したことを明らかにしている。欧州の極右勢力や移民問題などの議論においてはイーロンと意見が一致しており、現在もメッセージを交わし合う関係が続いているという。スペースXのロケット打ち上げが月面に衝突した日も、世界を変えた長男をめぐる因果は続いており、2人の複雑な絆の行方に関心が集まっている。