オーストラリア・ヴィクトリア州ワンガラッタで12月19日、無所属のヘレン・ヘインズ下院議員が車ではねられ重傷を負った事件で、夫のフィル・ヘインズ氏が21日に記者会見を開き、同議員が両脚を失ったことを明らかにした。事件をめぐっては、環境活動家のブレンダン・ニュージェント被告が起訴され、同日初出廷している。
選挙区事務所前で発生した意図的な車両衝突事件
オーストラリア・ヴィクトリア州ワンガラッタにあるヘレン・ヘインズ議員の選挙区事務所の外で19日午後3時35分ごろ、事件は発生した。BBC Newsなどの報道によると、白色のトヨタ・ランドクルーザーを運転していた男が車をUターンさせてヘインズ議員をはね、さらにバックしてもう一度はねたとされる。現場では居合わせた通行人が容疑者を車から引きずり出して身柄を拘束し、駆けつけた警察に引き渡した。政治的暴力がまれな同国において、この衝撃的な事件はワンガラッタの地域社会だけでなく、オーストラリア政界全体に大きな動揺を与えている。
夫が語った現在の容体と過酷な回復への道のり
メルボルンの病院で治療を受けているヘインズ議員について、夫のフィル・ヘインズ氏が21日に記者会見で詳細を語った。事件直後の手術で片脚を失い、同日朝の時点で残るもう片方の脚も切断したという。フィル氏は「恐ろしい事件」により重傷を負ったものの本人は心身ともに健康だと述べ、「この事件で唯一良い知らせは、彼女が生きているということだ」と胸中を明かした。さらに、回復への道のりは長く困難になるとしながらも、妻の強い意志に期待を寄せている。病院スタッフや国内外からの支援に対し、慈善団体「セーブ・ザ・チルドレン」への寄付を呼びかけるとともに感謝の意を表した。

起訴されたニュージェント被告の法廷出廷と背景
事件に関与したとして逮捕されたのは、近隣の町タラウィンギーに住む環境活動家のブレンダン・ニュージェント被告(43)である。被告は危険運転致傷、故意に重傷を負わせた行為、および連邦公務員への傷害の3件の罪状で起訴され、21日午前に初めて裁判所に出廷した。短い審理の間は終始無言で感情を表に出さず、保釈の申請は行わなかったため、来年2月に再び出廷する予定となっている。弁護人は被告に精神的な健康上の問題があり、特発性の横断性脊髄炎という神経疾患を患っていると主張した。警察は殺人未遂の罪状追加も視野に入れて捜査を進めている。
政治的緊張と安全確保をめぐる議論の行方
アンソニー・アルバニージー首相は事件直後から事故ではなく意図的な襲撃であるとの見方を示し、対テロ警察も捜査に加わっていることを明らかにした。トニー・バーク内相によると、オーストラリア国内では政治家に対する脅迫や嫌がらせの報告が過去1年間で951件から1067件へと増加傾向にある。連邦警察は国内の連邦議員226人全員を個別に警護するには膨大な人員が必要であるとしており、今回の事件を受けて議会議員の警備体制や安全確保のあり方について深刻な議論が巻き起こっている。動機の解明や被告と議員の個人的なつながりの有無については、引き続きヴィクトリア州警察とオーストラリア連邦警察による捜査が進められている。