午後の眠気や仕事中の集中力低下に対し、コーヒーに頼るのではなく「10分の散歩」を取り入れることで生産性が向上すると、医療法人社団青泉会下北沢病院理事長の久道勝也医師がYahoo!ニュースなどで指摘している。足裏の感覚器が脳を刺激し、カフェインを上回る覚醒効果や発想力の維持をもたらすという。
足裏のセンサーが脳を刺激する仕組み
多くの人は脳が司令塔で足は従属物だと考えがちだが、歩行医学の視点では足こそ「外に飛び出した脳の支部」だといえる。人間は歩行時間の約80%を片足立ちで過ごしており、足裏に張り巡らされた「メカノレセプター」と呼ばれる精密センサーが地面の硬さや傾斜を瞬時に感知している。一歩ごとに感覚信号が脳へ送られ、姿勢の調整や次の体勢の準備が行われる。四足歩行と異なり、片足だけで全体重を支え続ける人間の二足歩行は、脳と足裏の精密なバランスと予測の回路への依存度が極めて高い。

生産性向上とアイデア維持の実験データ
歩行は仕事の生産性にも大きく寄与し、歩いた日は歩かなかった日と比べて生産性がおよそ20%上がると言われている。スタンフォード大学の実験では、歩きながらアイデアを出した後に椅子に座っても、その創造性は約9割の高さが保たれることが確認されている。ただし、効果は数時間で徐々に薄れていくため、30分をまとめて歩くのではなく、10分を3回に分けるなどこまめに分割して歩く方が1日を通じて脳の活性化した状態を保つ上で効果的である。
今日から実践できる細切れの散歩習慣
日常生活の中で歩行を取り入れる方法は複数存在する。朝、隣の駅まで10分歩いてから仕事に向かう、昼休みにコーヒーのかわりにオフィスビルの周りを一周する、午後に行き詰まったらオフィスフロアを出て少し歩くといった行動は、どれも今日から始められる習慣である。スタンフォード大学の研究に基づく創造性維持の効果も含め、こうしたこまめな移動は日々の業務における頭の切り替えを助ける。
動くことと考えることの生物学的背景
生き物の世界には「動かなくなれば脳は要らなくなる」という摂理が存在する。生まれたときは海を泳いで動き回るホヤは、岩などにくっついて動かない暮らしを始めると自らの脳と目を消化して食べてしまう。人間の場合も、歩くことを諦めれば脳はその働きを手放していく。毎日歩く習慣を持つ人の脳は年齢を重ねてもしっかりと働き続けるため、歩行は脳の若さを保つための重要な手段となっている。