オーストラリアの無所属ヘレン・ヘインズ連邦下院議員(65)が19日、ビクトリア州の事務所外で車にはねられ重体となった。警察は故意の犯行と断定し、43歳の男を逮捕した。容疑者の車からはナイフが見つかっており、テロ対策特別班が捜査を進めている。
事務所外で起きた故意の衝突事件
ビクトリア州ワンガラッタにあるヘレン・ヘインズ議員の事務所前で19日午後3時35分ごろ、事件は発生した。ロイター通信によると、ヘインズ氏は自身の車のトランクから荷物を取り出していたところ、走行してきた白いトヨタ・ランドクルーザーにはねられた。AFPBB Newsは、目撃者の証言として、衝突音の後に女性が2台の車の間に挟まれていた様子を伝えている。運転していた男は現場にいた市民らに取り押さえられ、その後警察に逮捕された。車内からはナイフが発見されており、州警察は一般市民への脅威はない単独の事件として捜査している。
テロ対策特別班による捜査の開始
アンソニー・アルバニージー首相は会見で、逮捕された男の捜査にテロ対策特別班が当たっていることを明らかにした。事件の動機については依然として不明であり、首相は捜査中であることを理由に臆測を控えるよう呼びかけている。AFPBB Newsによると、容疑者の男は以前から警察に把握されていた人物だった。ヘインズ氏はヘリコプターでメルボルンのアルフレッド病院へ搬送され、同日夜に手術を受けたものの、依然として重体となっている。
政治家への脅迫が増加するオーストラリア
今回の事件を受け、オーストラリア国内では政治家に対する暴力や嫌がらせへの警戒感が強まっている。バーク内相は、国内で議員に対する脅迫や嫌がらせの件数が、過去1年間で1067件に達したことを公表した。前年の951件から増加傾向にある。アルバニージー首相は公共放送ABCのインタビューで、SNS上での攻撃的な書き込みが政治的な緊張を高めていると指摘した。その上で、首相は次のように危機感を示している。
オーストラリアで良いのは、政治家が地域を歩き人々と交流できることだ。スーパーや路上、街頭集会、公開討論会で人々と会話できないような政治制度にはしたくない。これはわれわれの民主主義の重要な一部だ。
看護師出身の無所属議員としての歩み
65歳のヘインズ議員は、看護師、助産師、研究者としてのキャリアを経て、2019年に連邦議会へ初当選した。ロイター通信によると、同氏は主要政党への政治献金の透明性を高める改革や、移民収容施設での携帯電話使用の容認、化石燃料への補助金支出反対など、独自の立場を貫いてきた。政治の透明性向上や汚職撲滅に向けた取り組みで広く評価されており、各界から支援の声が寄せられている。野党自由党のアンガス・テイラー党首も、今回の襲撃を「衝撃的な日」と表現し、暴力を容認しない姿勢を強調した。

今後の捜査と民主主義への影響
現在、事件の全容解明に向けた捜査が続いており、男の犯行動機や背景の特定が急がれている。アルバニージー首相は、民主主義の根幹である「意見の相違」が、個人攻撃や暴力に発展している現状を懸念している。オーストラリアにおいて政治家と市民の距離が近いことは民主主義の重要な要素とされており、今回の襲撃事件が今後の政治活動や警備体制にどのような影響を与えるかが注目される。ヘインズ氏の容体を含め、当局による続報が待たれる状況だ。