米国土安全保障省(DHS)は2026年10月20日、連邦政府の民間機関に対し、中国の新興企業であるディープシーク(DeepSeek)が開発した人工知能(AI)ツールや関連サービスの全廃を命じたと、ガーディアンが報じた。今回の措置は、米中両国が急速に発展するAI分野での主導権争いを繰り広げる中で出されたもので、情報技術(IT)端末からの即時撤去が義務付けられている。
DHSの発表によると、禁止対象はディープシーク自身の製品にとどまらず、同社の技術を用いて第三者が作成したツールや関連エンティティにも及ぶ。タイムズ・オブ・インディアやテックインサイダーなどの報道によると、この命令は連邦政府の民間機関を対象としているが、国防総省や情報機関は管轄外とされている。
安全保障上の脅威とデータ流出の懸念
DHSが添付した文書では、ディープシークのモデルが「複数の脅威ベクトル」を孕んでいると指摘されている。ガーディアンの報道によれば、政府職員やベンダーがこれを使用した場合、機密データが中国に転送される恐れがあるという。
サーバーが中国国内に存在し、同国の法制度の下では政府が民間企業のインフラへ「広範な権限」を持ってアクセスできる点がリスクとして挙げられている。タイムズ・オブ・インディアはまた、政府機関による利用が米国の個人や政府機関に関する実用的なインテリジェンスを生み出す可能性があり、モデル自体にマルウェアやセキュリティ上の脆弱性が含まれている恐れもあると伝えている。
ディープシークを巡るこれまでの経緯
ディープシークは中国を代表するAI研究機関の一つであり、2025年1月には低コストかつ高性能なチャットボットを発表して業界に大きな衝撃を与えた。ガーディアンによると、同社は同年4月に待望の新モデル「V4」をリリースし、10月上旬にはV4の軽量・高速バージョンをアップデートしていた。

2025年1月の無料AIアシスタントの登場は米株式市場にも大きな動揺を与え、主要ハイテク企業の市場価値から巨額の損失を発生させた経緯がある。タイムズ・オブ・インディアによれば、商務省や海軍など複数の米政府機関や、ニューヨーク州、テネシー州、バージニア州などの複数州がすでに政府端末での利用を制限する措置をとっていた。また、テックインサイダーによると、今回の正式発表に先立ち、制限自体は7月末の段階ですでにひそかに効力を生じていたという。
米中両国は激しい競争を続ける一方で、9月にホワイトハウスで行われた首脳会談において、AIインシデントに関する「コミュニケーションチャネル」の設置で合意している。この課題は、11月に中国・深センで開催予定の首脳会談でも再び議論される見通しである。