習近平国家主席が「史上最高」と評する中ロ関係の陰で、ロシア国内の中国企業による賃金未払いが深刻化している。2026年8月には、ウスチ・ルガの建設現場で1000人超の中国人労働者が抗議し、警察車両を取り囲む事態が発生した。労働力不足が続くロシアで、出稼ぎ労働者の窮状が浮き彫りになっている。
ウスチ・ルガで発生した中国人労働者による抗議活動
2026年8月9日、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクから約160キロ離れた港町ウスチ・ルガで、大規模な混乱が発生した。Yahoo!ニュースの報道によると、中国の国有企業である中国化学第七建設が請け負う大型ガス化学プラントの工事現場において、1000人を超える中国人作業員が警察車両を取り囲んだ。
対立の火種となったのは、長期にわたる賃金の未払い問題である。現場で管理者と口論になり、罵声を浴びせた作業員1人がロシア警察によって強制的に連行されようとした際、周囲の作業員が一斉に反発した。現場では「警察の職務執行だ、撮るな」と叫ぶ管理者の声や、中国国歌を歌う作業員たちの怒号が飛び交い、収拾がつかない状況となった。結果として、警官はその場で拘束していた作業員を解放せざるを得なくなった。
拡大する賃金未払いと労働現場の過酷な現実
今回のような労働環境を巡るトラブルは、ウスチ・ルガに限ったことではない。ロシア各地の巨大プロジェクトにおいて、中国人労働者は賃金未払いに直面している。中央通訊社などの報道によれば、作業員たちは雇い主である中国企業とロシア側の双方に給料の支払いを求めているが、解決の兆しは見えていない。
ロシア国内の建設現場では、中国化学工程集団などが総額200億ドル(約3兆1600億円)規模の事業を手がけている。また、ハバロフスク地方の製油所やアムール州の樹脂工場など、大規模なインフラ整備が進行中だ。しかし、労働者たちは夢を抱いて国境を越えたものの、異国の地で孤立を深めている。
ロシアの労働力不足が招いた外国人労働者への依存
なぜロシアはこれほどまでに多くの外国人労働者を必要としているのか。プーチン大統領は、ロシアの失業率が2.2%という世界でも最低水準にあることを繰り返し強調してきた。しかし、これは裏を返せば、国内に雇える人材がほとんど残っていないことを意味する。
労働力不足の深刻さを裏付けるデータは以下の通りである。
- 軍事動員により70万〜90万人が労働市場から離脱した
- 2022年初頭と比較して、外国人の出稼ぎ労働者は約100万人減少した
- ロシア経済を維持するためには、さらに150万人の労働者が必要とされている
急増する中国人労働者とロシアの受け入れ態勢
労働力の穴を埋める存在として、中国人労働者の数が増加している。香港の経済メディア「EJインサイト」の寄稿によると、旧ソ連諸国出身者を除けば、現在ロシアで最も多い外国人労働者は中国人である。ロシア内務省の統計では、2025年に中国人に発給された労働許可は9万2000件に達した。これは前年の1.5倍にあたる数字であり、発給総数24万件の約4割を占めるまでになっている。
中ロ両政府は「蜜月関係」を内外に誇示し続けている。しかし、習近平国家主席が掲げる「史上最高」の友好関係の裏側で、過酷な労働環境に置かれた労働者の不満は限界に達しつつある。賃金未払いや管理体制への不信が解消されない限り、今後も建設現場での衝突が繰り返される可能性は否定できない。労働力の供給源として依存を強めるロシアと、その現場で疲弊する中国人労働者たちの溝は、容易には埋まりそうにない。