ドナルド・トランプ米大統領がロシアのウラジーミル・プーチン大統領に経済的な譲歩をして交渉のテーブルに引き戻そうとする賭けは、議会の与野党双方から強い反発を受けている。ロシア産ディーゼルに対する制裁の一時的な緩和や、9月18日に成立した「リンジー・O・グラハム制裁法(Sanctioning Russia and Iran Act of 2026)」の主要規定を一時停止する大統領令の発出など、立て続けの政策転換により、ウクライナ支援を巡るワシントンの姿勢に動揺が広がっている。トランプはプーチンとの電話会談を経て、ロシアが30万トン以上のディーゼルを供給し、その後さらに50万トン、100万トン、最終的には300万トンを追加供給する見通しであることを明らかにした。.
和平交渉の継続とロシア製ディーゼル輸入をめぐる攻防
トランプは、制裁を緩和する理由について、交渉の進展を阻害しないためだと強調している。財務省は10月9日付で「一般ライセンス135(General License 135)」を発行し、2027年4月7日までロシア産ディーゼルに関連する取引を一時的に許可した。トランプは自身のSNS「Truth Social」において、次のように自身の立場を説明している。

ドナルド・トランプはTruth Socialへの投稿で「ロシアに関する私の決断は非常に単純なものだ。私は現在、ロシアとウクライナの戦争における和平を交渉中であり、愚かにもロシアを交渉のテーブルから遠ざけてしまうようなことはしたくない」と述べた。
またトランプは、現在の交渉には「人質交渉」も含まれていると付け加えたが、具体的な詳細は明かさなかった。イランとの緊張関係についても言及し、ロシアがイランを支援しないよう牽制しつつ、「愚かな人々が邪魔をしなければ」現状を維持できるとの見解を示した。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対する批判と燃料価格の高騰
トランプは、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がロシアの製油所に対する攻撃を続けていることが、世界の燃料不足を悪化させアメリカの消費者や農家に打撃を与えていると激しく非難した。「ゼレンスキーは、これらの攻撃が米国を含む世界のディーゼル市場を深刻に傷つけていることを知っていながら、ロシアのディーゼル精製所を標的にしている」とトランプは述べ、ウクライナ側が戦争を終わらせるインセンティブを持っていないと主張した。「彼はこの戦争を終わらせたくないのだ。おそらく、最初からそうだったのだろう」とも付け加えた。
これに対しゼレンスキーは10月18日のインタビューで、一連の動きについて「ウクライナに降伏を強いるための措置が取られたと信じている。それが実態だ」と反発した。キーウとその同盟国は、このディーゼル合意に衝撃を受けており、トランプとゼレンスキーの関係は再び著しく冷え込んでいる。

議会からの反発と今後の懸念
ワシントンでは、共和党議員の間でトランプの姿勢に対する反発が広がっている。議会が先月、圧倒的な超党派の支持で可決した「リンジー・O・グラハム制裁法」には、ロシアからの輸入品に対する500%の関税や、ロシアの石油・ガスを購入する国々に対する100%の関税などが含まれていた。しかし、トランプは国家利益を理由とした免除条項を行使し、これらの制裁を停止した。
マイケル・マッコール下院議員(共和党、テキサス州)は、10月17日の声明でトランプの制裁パッケージ免除を強く批判した。マッコールは、プーチンはこうした譲歩に対して「米国への蔑視と、罪のないウクライナ人に対する暴力の激化」で報いるだろうと警告し、大統領に対して方針を撤回し「力による平和」という原則に立ち返るよう強く求めた。
現時点では、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が10月19日にテヘランを訪問する予定であるなど、トランプが描くロシアとイランの分断戦略が不透明な状況にある。トランプ政権が経済的圧力の緩和によってプーチンを和平交渉へ誘導できるのか、あるいはロシア側がさらなる譲歩を引き出すために時間稼ぎをするのか、事態は予断を許さない状況が続いている。