NASAのジェット推進研究所(JPL)のエンジニアは、地球から約133億マイル離れた深宇宙を飛行するボイジャー2号において、電力消費を削減する新たな手法に成功した。NASAが2026年8月4日に発表した内容によると、「ビッグバン(Big Bang)」と名付けられたこの作戦により、ボイジャー2号に搭載されている残り3つの科学観測機器を、少なくともあと1年的に運用し続けることが可能になった。
「ビッグバン」作戦の仕組みと目的
ボイジャー2号は、プルトニウムの崩壊熱を電気に変換する放射性同位体熱電気転換器(RTG)を動力源としているが、プルトニウムの減少に伴い、電力は毎年約4ワットずつ低下している。打ち上げから約半世紀が経過し、電力余裕が極めて少なくなったため、ミッションチームは非必須デバイスの停止によるエネルギー節約を余儀なくされていた。
今回の「ビッグバン」作戦では、一部の高電力デバイスを同時に停止させ、それを低電力の代替手段に切り替えるという手法が採られた。この際、極寒の星間空間で宇宙機が動作し続けるために必要な温度を維持することが不可欠となる。具体的には、電子機器を動作温度範囲に保つだけでなく、姿勢制御のための燃料ラインを温めて機能させるためのヒーター2基と別のデバイスの切り替えが行われた。
この措置を講じなければ、ボイジャー2号は2026年末までに、残された3つの科学観測機器のうちさらに1つを停止させる必要があったという。
現在運用されている観測機器とミッションの現状
ボイジャー2号は当初10の観測機器を搭載していたが、惑星接近時にのみ必要な機器はすでに停止されている。2024年以降、電力不足によりさらに各機2つの機器が停止させられた。現在、ボイジャー2号で稼働しているのは以下の3つのセンサーのみである。
- 宇宙線サブシステム(Cosmic Ray Subsystem): 高エネルギー粒子の測定
- 磁力計(Magnetometer): 局所的な磁場の測定
- プラズマ波サブシステム(Plasma Wave Subsystem): 宇宙機周囲の帯電ガスの波紋を測定
これらの機器により、太陽や惑星の影響が及ばない星間空間の特性が明らかになる。NASAは、こうしたミッションから得られる1年分の追加データには極めて大きな価値があると述べている。
ボイジャー1号への適用と今後の展望
NASAは、ボイジャー2号での成功を踏まえ、同様の電力節約策をボイジャー1号にも適用する計画である。ボイジャー1号は地球から約159億マイル離れており、ボイジャー2号よりも遠方に位置している。また、2月に計画的な操作後に予期せぬ電力低下が発生したため、状況はボイジャー2号よりも深刻である。ボイジャー1号では、直近の機器が4月に停止され、現在稼働している科学観測機器は10個中2個のみとなっている。


ボイジャー1号への「ビッグバン」作戦は今後数ヶ月以内に実施される予定であり、これにより運用寿命の延長が期待されている。また、ボイジャー1号は11月に、地球からの無線信号の片道到達に24時間を要する「ライトデイ(light day)」という節目に到達する。
1977年に打ち上げられた2機の探査機は、木星、土星、天王星、海王星の4惑星、および48の衛星、惑星の磁場や環を調査してきた。2027年には、運用が継続していれば打ち上げから50周年を迎える。