大阪大学産業科学研究所などの国際共同研究グループは、2026年10月5日、1個のアミノ酸分子が流す微弱な電流波形を機械学習で解析し、生命の起源を探る上で重要な「L型」と「D型」アミノ酸を識別することに成功したと発表した。愛媛新聞ONLINEなどの報道によると、マーチソン隕石やアタカマ砂漠の試料分析でも有用性が実証され、将来の小型な宇宙生命探査装置への応用が期待されている。
1分子の電流測定によるL型とD型アミノ酸の識別
大阪大学産業科学研究所の大城敬人准教授や谷口正輝教授らは、ジョージア工科大学、NASAゴダード宇宙飛行センター、シカゴ大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)などと国際共同研究グループを形成した。グループは、2本の金電極の間に約0.5ナノメートルの隙間であるナノギャップを形成した。そこを1個のアミノ酸分子が通過する際に流れる量子トンネル電流を測定し、その電流波形をAIで解析する手法を開発した。これにより、19種類すべてのキラルアミノ酸についてL型とD型を高い精度で識別することに成功している。

マーチソン隕石やアタカマ砂漠の試料を用いた実証実験
研究グループは開発した技術を実際の試料に応用し、その有用性を確かめた。1969年にオーストラリアに落下した炭素質隕石であるマーチソン隕石の試料や、火星類似環境として知られる南米チリのアタカマ砂漠の土壌から抽出したアミノ酸を分析した。その結果、主要なアミノ酸組成を捉えることに成功し、従来の液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS分析)と共通する傾向を確認した。一方で、成分ごとの定量値やD/L比には差もみられ、実用化へ向けた課題も明らかになっている。
宇宙探査機の制約を克服する電気式検出技術の意義
地球上の生命がタンパク質を合成する際には、ほぼL型のアミノ酸に偏っているという特徴がある。宇宙空間や隕石で見つかるアミノ酸のキラリティを調べることは、生命誕生の過程や地球外生命の痕跡を探る手がかりとなる。従来の大型分析装置とは異なり、本手法は大きな光学系や複雑な反応操作を必要としない。重量、サイズ、消費電力、耐振動性などの厳しい制約が課される宇宙探査機への搭載において、小型で高感度な電気式分析装置を実現する基盤技術として注目を集めている。
今後の研究展望と2026年10月の発表スケジュール
本研究成果は、2026年10月5日付で米国科学誌「Nature Communications」に公開された。研究グループは、今後は複雑な実試料に対する精度をさらに高め、信頼性の高い宇宙生命探査技術へと発展させたい考えを示している。なお、本研究成果についての記者発表が、2026年10月13日11時30分から大阪大学中之島センターおよびオンラインで開催される予定である。