ケンブリッジ大学の大学院生でリサーチフェローを務める代田七瀬氏が、ベトナム・ホーチミンのクラブで実際に働きながら、海外で就労する日本人女性「外キャバ嬢」の実態を調査した。現地の高級外国人街にあるタワーマンションの一室が従業員寮として提供されており、労働環境や生活実態の一端が明らかになった。
ホーチミンのクラブで働く日本人女性の調査
ベトナム最大の都市ホーチミンにある「クラブ・サイゴン」には、空港への出迎えや滞在場所の提供など、海外渡航や語学力に不安がある若い日本人女性を支える福利厚生が整っている。オランダ・国際アジア研究所(IIAS)のリサーチフェローである代田七瀬氏が現地に赴き、夏休みを利用してホステスとして働きながらその背景を調査した。クラブの黒服を務める20代のフン氏が空港に出迎え、日本語で案内を担当するなど、組織的な受け入れ体制が確認されている。
タワーマンションの高層階にある従業員寮の実態
クラブが提供する従業員寮は、30階建てのタワーマンションの25階に位置している。広いリビングやファミリー向けの冷蔵庫、住民専用のジムやヤシの木に囲まれた屋外プールなどが完備されており、東京郊外やイギリスでのシェアハウス生活を経験してきた代田氏にとって、想像を超えるぜいたくな生活環境であった。一方で、リビングのキッチンや冷蔵庫にはほとんど使用感がなく、先住の女性たちが料理をあまりしていなかった様子もうかがえる。
各国で異なる海外キャバクラの寮事情とトラブル
東南アジアをはじめとする海外のキャバクラが提供する寮は、必ずしも一律で快適とは限らない。代田氏の調査による外キャバ嬢たちの証言では、ハワイの寮で隠しカメラが発見された事例や、カンボジアでのゴキブリの発生、香港でのダニ被害や狭小な居住環境、シャワーのお湯が出ないといったトラブルが各国で相次いでいる。住環境の不備や待遇への不満から、従業員の間では転籍や他国への移動が頻繁に行われており、流動性の高さが浮き彫りになっている。
「ライフスタイル移民」と「出稼ぎ」の価値観の差異
ホーチミンの寮で同居した30歳の美香ちゃんは、香港でのダニ被害や狭い部屋に苦労しながらも、より高い収入が得られる環境やオーストラリアでのワーキングホリデーを視野に入れている。物価の安さや生活環境の良さを重視する「ライフスタイル移民」的な傾向がある一方で、より高い報酬を求めて実利的な「出稼ぎ」を選択する女性も存在する。ジェンダー化された労働を担いながらも国境を越えて移動する日本人女性たちの背景には、それぞれの明確な動機や新自由主義的なグローバルな流れに対する意識の違いがある。