ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する中、戦場では数十万円程度の廉価な一人称視点ドローン(FPVドローン)が10億円を超える戦車を撃破する事例が相次いでいる。機甲戦力や砲兵戦力が枯渇した前線で、従来の戦術や「戦車不敗の神話」をいかに書き換えているのか。軍事史研究家の木元寛明氏の著書などをもとに実態を追う。
侵攻から5年目に突入した戦場の変化と膠着状態
2022年2月に始まったロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻は、5年目に突入した2026年9月の執筆時点に至るまで、終結する気配を見せていない。news.livedoor.comおよびYahoo!ニュースが伝えたところによると、戦場の実態は初期の機動戦から陣地戦へと移行し、長大な戦線は膠着状態に陥っている。その最大の要因は、ロシア軍もウクライナ軍も、機動戦の主体である機甲戦力和力戦の骨幹となる砲兵戦力が消耗し枯渇したことにある。
コスト削減の必要性から生まれたドローンの活用
戦線が膠着し最前線部隊が近距離で対峙する状況下では、敵情を収集するための斥候が必要となる。しかし、短期決戦を前提とした高価な装備は無限に存在せず、想定外の長期戦において両軍はコストの削減を余儀なくされた。こうした中で、ウクライナ軍の最前線部隊は、国内で容易に入手できる民生品の市販ドローンやスマートフォン技術を応用し、斥候の代替品として利用し始めたとnews.livedoor.comは報じている。

数十万円のFPVドローンが10億円超の戦車を破壊
もともと民生ホビー用途だったFPV機体に爆薬を搭載し、兵士が専用ゴーグルを通してリアルタイムの映像を見ながら操縦する新戦法が定着した。クアッドコプター型のFPVドローンは費用が数十万円程度で済み、歩兵一人がノートPCで操作できる。戦車砲弾1発の費用と同等でありながら、10億円を超える戦車を破壊することが可能であり、費用対効果の面で戦場の力学を決定的に書き換えた。
「戦車不敗の神話」を揺るがす精密攻撃の実態
かつては「最適な対戦車手段は戦車である」とされ、高度な射撃統制システム(FCS)の進化によって戦車の命中精度は劇的に向上していた。しかし、従来の戦車砲弾自体には弾道を修正する機能がなく、発射後に目標を追尾することはできない。これに対し、FPVドローンは操縦者の自由意思で障害物を迂回し、ロシア軍戦車の開放されたハッチから戦闘室に侵入して自爆するなど、目標を見つけ次第ほぼ確実に命中させることが可能となった。

機動戦への回帰と今後の戦局の行方
現在のウクライナ戦線のような陣地戦では戦争に決着がつかないと木元氏は指摘する。戦争を終わらせるためには膠着状態を脱して機動戦に回帰する必要があり、その主役は有人・無人戦車を含む機動戦力以外にない。FPVドローンの特性をいかに生かして機動戦の状況へ持ち込むかが、今後の戦局を左右する重要な鍵となる。