エスカレーターで歩かない利用者を応援する啓発ポスターが、今春からJR立川駅など4駅で掲示されている。読売新聞の報道によると、鉄道各社が歩行の危険性を訴えてきた一方で効果が薄いため、JR東日本の社員が「右側に立つ人に『あなたは間違っていない』と応援したかった」と制作した。
JR立川駅など4駅で始まった立ち止まり応援ポスター
読売新聞によると、ポスターが掲示されているのはJR立川、三鷹、武蔵小金井、国分寺の4駅で、エスカレーター付近やコンコースなどに「手すりにつかまるあなたを立川駅は応援しています」などと書かれている。三鷹駅副長の伊藤知範さん(46)らは、歩く人にやめるよう求めるよりも、立ち止まる人に感謝を伝えた方が心に響く効果があると考えた。ホームの幅が狭い三鷹駅では、通勤ラッシュ時に右側を空ける慣習で左側だけに長い列ができ、人が滞留して危険な状態が生じていた。
東京消防庁管内で確認されたエスカレーター事故の現実
エスカレーターを歩行する人のために右側を空けることで、左半身が不自由な利用者が左手で手すりをつかめない問題が生じている。都商品等安全対策協議会の調査では、東京消防庁管内で2021年から2023年までの間に、エスカレーター歩行中の事故で少なくとも144人が救急搬送されたと読売新聞は伝えている。さらに朝日新聞の報道では、同期間の緊急搬送者数が3683人に上り、その6割から7割が65歳以上であったことが示されている。高齢者が右側に立った際に若者から怒鳴られるなどのトラブルも発生している。
鉄道各社による呼びかけと混雑緩和の模索
朝日新聞によると、京王電鉄の新宿駅などでは、エスカレーター工事に伴う混雑や進路ふさぎを防ぐため、案内や巡回員による強制的な立ち止まり施策が実施されてきた。埼玉県では2021年に、名古屋市では2023年に立ち止まりを義務づける条例が制定されたが、東京都内では制定されていない。国土交通省はエスカレーターは歩かず2列で立ち止まるよう推奨しており、鉄道各社はポスター掲示や自動音声での声かけを継続している。

片側空けの歴史的背景と変わる時代の価値観
江戸川大学の斗鬼正一名誉教授(都市人類学)は、エスカレーターの片側歩行について、第二次世界大戦中の1944年頃に英ロンドンで始まり、日本では1967年頃に大阪市の阪急電鉄梅田駅でアナウンスを機に始まったと指摘している。都内では1989年頃から自然発生的に広がった。斗鬼名誉教授は読売新聞の取材に対し、歩行の背景には大量生産で一糸乱れず行動するという20世紀的な価値観が残っているとし、安全意識や弱者への配慮など時代の価値観の変化とともに慣習が変わることを望む見方を示している。
