インドネシアのカリマンタン島やスマトラ島で続く森林火災により、絶滅危惧種のオランウータンの生息地が深刻な被害を受けている。野焼きや強力なエルニーニョ現象に伴う乾燥が被害に拍車をかけており、保護団体が救助活動を急ぐ一方、広範囲に広がる煙は周辺国にも深刻な影響を及ぼしている。
猛威を振るう火災とオランウータンの危機
インドネシアの西カリマンタン州で9月下旬、森林火災の影響を受けた地域で若いオランウータンが木にしがみついているのが目撃され、その後救助されたとナショナル ジオグラフィック日本版などが報じた。センゴンの木から5メートル足らずまで炎が迫り、白い樹皮が煙と灰で黒ずむ中、細い枝にしがみついて逃げ場を失っていたという。現場にはボルネオ・オランウータン・サバイバル財団(BOS財団)の保全生態学者ジャマルティン・シヒテ氏らが駆けつけ、見通しも利かない濃い煙の中で救助活動にあたった。ボルネオオランウータンの半分以上が暮らす森や、グヌン・パルン国立公園などの生物多様性のホットスポットまで火災が及んでおり、生息地は深刻な脅威にさらされている。
2026年の焼失面積とエルニーニョ現象の影響
インドネシア国内では非常に強力なエルニーニョ現象が火災を悪化させており、被害は過去最大級となっている。ナショナル ジオグラフィック日本版などの報道によると、9月上旬発表の政府発表では約8000平方キロが焼失し、火災による煙が原因とされる死者は推計約1700人にのぼる。さらに民間の森林火災追跡サイト「ヌサンタラ・アトラス」の推計では、2026年1月から9月までの焼失面積は四国を超える約1万9000平方キロに達している。FNNプライムオンラインの報道では、現地の森林監視団体の推計として1月から8月までに東京都の4倍以上に当たる約90万haが焼失したとも伝えられており、高温と長期にわたる干ばつで熱帯湿地林の分厚い泥炭が乾燥したことが消火を極めて困難にしている。
相次ぐ野生動物の保護と現場の困難な作業
現地では森林保護団体による懸命の救助活動が続けられている。dメニューニュースによると、インドネシアでオランウータンなどの保護活動を行う団体「YIARI」は、8月6日から10月18日までに西カリマンタン州で53頭を保護したと明らかにした。しかし、火災が起きる森林での作業は高温と立ちこめる煙の中で行われ、オランウータンが高い木の上で身動きが取れなくなるなど困難を極めている。YIARIの広報担当であるヘリベルトゥス・スチャディ氏は、救助はあくまで「最後の手段」にすぎないと強調し、生息地の保全や効果的な火災予防を含む包括的なアプローチが必要だと訴えている。

周辺国へ広がる煙の被害と拡大する生活への影響
森林火災による広範囲な煙はインドネシア国内にとどまらず、周辺国にも深刻な影響を及ぼしている。FNNプライムオンラインの報道によると、中心地から離れたシンガポールでは灰色の空に赤い太陽が浮かぶほど煙が充満し、観光業への打撃や住民の不満につながっている。隣接するマレーシアでも早急な対応を求める声が上がり、インドネシア政府は約7万人の消火人員を動員して対応にあたっている。現地保健省は呼吸器疾患を発症した患者が28万人を超えたと発表しており、国内の経済活動や人々の生活全般に大きな影を落としている。
遅れる雨期と今後の見通し
インドネシアでは強力なエルニーニョ現象の影響によって雨期の到来が遅れており、火災のさらなる拡大が懸念されている。長期的な原生熱帯雨林の火災について、1990年代初頭からオランウータンを研究してきた米ボストン大学の人類学者シェリル・ノット氏は、種の長期的な生き残りの見通しが脅かされると警鐘を鳴らしている。被害の拡大を受け、インドネシア政府は周辺諸国からの支援の受け入れを進めつつ、消火活動や野生動物の保護に総力を挙げているが、根本的な解決に向けた道のりは依然として不透明な状況が続いている。
