モーター大手のニデックは20日、外部の弁護士らで構成する役員責任調査委員会の報告書を公表し、永守重信創業者ら歴代社長を含む9人に対し計約276億円の損害賠償責任を認定した。業績目標の達成を最優先とする企業風土の中で不正を是正する義務を怠ったとしており、同社は提訴を含む法的措置を検討している。
永守重信創業者ら歴代社長5人を含む9人の責任を認定
ニデックが公表した役員責任調査委員会の報告書では、永守重信氏や創業メンバーである元社長の小部博志氏、元社長の吉本浩之氏と関潤氏、直近で辞任した岸田光哉氏の歴代社長5人が責任対象に含まれた。さらに、元最高財務責任者(CFO)の佐藤明氏ら元CFOや元常勤監査役など計4人の合計9人に対して損害賠償責任が認定されている。会社法では取締役や監査役が義務や役割を怠った場合、会社に対する損害賠償責任を負うと定めており、今回の調査では9人全員に相応の因果関係が認められた。
計約276億円にのぼる損害額の内訳と算出根拠
認定された損害額は合計で約276億円に達し、巨額な数字が浮き彫りとなった。この金額は、不適切な会計処理に関する調査費用をはじめ、有価証券報告書の訂正費用、そして東京証券取引所からの上場違約金を合計したものである。ニデックでは永守氏による業績目標達成への苛烈なプレッシャーの下で売り上げや利益の水増しが繰り返されており、調査委員会はこれらの一連の費用と旧経営陣の対応との間に明確な因果関係があると結論づけた。
逆転した会計理念と負の遺産の処理方針
積み上がった減損リスクのある巨額の負の遺産について、歴代の社長は処理を計画していたが、永守氏や小部博志氏は業績目標が達成できた範囲内でのみ処理を認める方針を採用した。委員会はこの対応を、会計の基本的な理念に逆転する誤った考えを有していたと強く批判している。また、それを是正すべき佐藤明元取締役ら歴代のCFO2人についても、経営トップの意向を優先して不適切な処理方針を策定していたと指摘された。
岸田光哉前社長らの不正認識と是正措置の欠如
財務報告に関する不適切な言動を理由に9月29日付で社長を辞任した岸田光哉氏については、監査法人に対して虚偽説明が行われたことを認識していたと認定された。その上で、不適法な会計処理を回避・是正するための措置を一切とらなかったとしている。吉本浩之氏、関潤氏の両元社長や元常勤監査役の2人についても、不正な会計処理を認識し得た立場にありながら是正しなかったとして責任が認められた。
株主からの提訴請求と東京証券取引所による特別注意銘柄の指定
ニデックの不正会計を巡っては、複数の株主が会社に対し、永守氏ら現旧役員に損害賠償請求訴訟を起こすよう求める提訴請求書をすでに送付している。会社側が提訴を行わなければ、株主代表訴訟に発展する可能性がある。同社は現在、東京証券取引所から特別注意銘柄に指定されており、今月末までに内部管理体制を改善する道筋を示せなければ上場廃止となる恐れがある状況に直面している。
法的措置の検討による旧経営陣との決別姿勢
ニデックは今回責任を認定された永守氏ら9人に対して、提訴を含む法的措置を検討しており、実行すれば旧経営陣と決別する姿勢を明確化することになる。社外の調査委員会による厳しい認定結果と株主からの強い法的請求が重なる中、同社は今月末の期限に向けて、内部管理体制の立て直しと経営責任の明確化という極めて重い課題への対応を迫られている。