先端AI開発の現場を揺るがすスキャンダルが表面化したのは、2026年9月30日のことでした。OpenAIのテクニカル監視対策チームがサンフランシスコ本社の役員会議室で実施したセキュリティ・スウィープ(点検)の際、トイレットペーパーに包まれた状態でテレビ背面のUSBポートに差し込まれている Seeed XIAO ESP32-S3 Sense録音装置 が発見されました。
サンフランシスコ本社会議室での隠し録音装置発見と捜査の経緯
問題の会議室は、通常の社員の立ち入りが制限され、経営陣と秘書のみが予約できる極めて機密性の高いスペースでした。内部の指導者層による会議では、専有的な研究開発や製品計画、事業展開の機会といった重要機密情報が議論されるほか、政府高官やビジネスパートナーとの外部ブリーフィングにも利用されていました。連邦当局によれば、米国司法省は、サウジアラビア国籍で米国永住権保持者の35歳のアブドゥラマン・アルフォザン被告を起訴しました。
同被告は2025年7月にOpenAIのプロダクトチームへ加わっていましたが、この事件の発覚を受けて解雇され、10月9日に連邦捜査局(FBI)によって逮捕されました。検察の刑事告訴状によれば、装置は9月28日ごろに設置されたもので、監視カメラの映像には、アルフォザン被告が事件の数日前にその会議室内を歩き回り、テレビの後ろを覗き込むような様子が記録されていました。
アルフォザン容疑者の経歴とサウジアラビア系VCファームでの活動
裁判所文書や公開プロフィールによると、アブドゥラマン・アルフォザン被告はサウジアラビアの東部州で育ち、高校まで現地で学んだ後、米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)に在籍し、メタ(Meta)での勤務経験やマイクロソフトでのインターン経験も持っていました。また、サウジアラビアのベンチャーキャピタルファーム「ラエド・ベンチャーズ(Raed Ventures)」のベンチャーパートナーとしても活動しており、同ファームにはサウジ王室のメンバーであるハリド・ビン・バデル・アル・サウウド王子も名を連ねています。

ラエド・ベンチャーズのウェブサイト上では、同被告について技術系スタートアップにおける豊富な経験を持つ熟練したプロフェッショナルであると紹介されていました。さらに、サウジアラビアのキング・アブドゥラ科学技術大学(KAUST)と結びついた奨学金プログラムやハッカソンでの受賞歴、スタンフォード大学やUCバークレーなど米国の名門大学周辺での活動記録が伝えられています。
ウィリアム・ペルニック弁護士は、「現在のメディアで描かれている見方にかかわらず、我々はアメリカの司法制度が依頼人を公正に扱うものと信頼している。依頼人は、地域社会と長年の結びつきを持つ、評判の良いプロフェッショナルである」と述べた。
検察側が指摘した出国計画と差し迫った逃亡の懸念
連邦検察は裁判所に提出した未公開の書類の中で、アルフォザン容疑者が逮捕される直前に妻や別の家族とともに母国サウジアラビア行きの片道航空券を手配していたことを明らかにしました。10月12日に出発するスケジュールが組まれていたため、司法省は保釈を認めず勾留を維持するよう強く求めています。

裁判所の記録では、同被告は電子機器などを用いて口頭のコミュニケーションを傍受しようとした罪に問われており、有罪判決を受けた場合には最大で5年の禁錮刑、25万ドルの罰金、および3年の監視付き釈放が科される可能性があります。また、弁護人を務めるウィリアム・ペルニック弁護士は、一連の容疑について本人らしくなく、長年コミュニティと結びついてきた実績あるプロフェッショナルであると主張しています。
捜査当局がオフィスのプリンター室に残された同容疑者のバッグを検査したところ、財布や身分証明書に加え、最初のものと酷似した 2台目の録音装置 が発見されました。当局は、これらが同社の超知能テクノロジーに関する機密の会話を盗聴する目的で配備されたと見ています。
国家安全保障とAI最前線における産業スパイの脅威
FBI長官のカシ・パテルは声明の中で、米国のスーパーインテリジェンス技術に関する機密情報を密かに捉えようとする試みであったと指摘し、米国のAIイノベーションの保護を最高レベルの防諜上の優先事項に位置づけていると強調しました。司法省の国家安全保障・サイバー・特別訴追部が本件の訴追を担当しています。
一方のOpenAIは、社内のAIモデルを活用してフォレンジック画像や装置のデータを分析し、数日前にどの従業員がそれを設置したかを特定したと発表しました。会社側は、現時点でモデルの重みやソースコード、顧客データが不適切にアクセスされたり持ち出されたりした兆候はないと説明しつつも、治安維持と最先端技術の保護に向けてFBIや連邦法執行機関と緊密に協力していく姿勢を示しています。