宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月20日にも、火星の衛星「フォボス」から試料を地球へ持ち帰る探査計画「MMX」の探査機を、H3ロケットで打ち上げます。着陸未踏の天体への挑戦に向け、開発を担った三菱電機は、過酷な環境下で機体を支えるための「着陸脚」の開発に注力しました。
10月20日打ち上げへ、火星衛星探査計画MMXの全容
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、火星の衛星「フォボス」を対象とした火星衛星探査計画「MMX」の探査機を、鹿児島県の種子島宇宙センターからH3ロケットで打ち上げる予定です。毎日新聞が報じたところによると、打ち上げ時期は10月20日にも設定されています。フォボスは1877年に発見された「火星の月」であり、直径は約23キロ。ジャガイモのような形状をしています。これまで探査機が着陸したことのない未踏の天体であり、宇宙探査の中でも極めて高い難度を誇るミッションです。
重力は地球の2000分の1、着陸の難しさ
フォボスの環境は、地球とは大きく異なります。その重力は地球の2000分の1程度と非常に小さく、着陸時に一度機体が傾くと、姿勢を立て直すことが極めて困難です。さらに、わずか6000キロ先にある火星本体の重力の影響も受けるため、着陸には高度な制御技術が求められます。この環境下でミッションを遂行するためには、安定した着陸と滞在を可能にする設計が不可欠でした。
「はやぶさ」とMMX、滞在スタイルの違い
小惑星探査機「はやぶさ」や「はやぶさ2」との大きな違いは、天体への滞在時間にあります。
- はやぶさ、はやぶさ2:表面に触れてすぐ離れる「タッチ・アンド・ゴー」方式
- MMX:フォボスに約3時間滞在し、計2回の着陸を行う計画
このように、MMXは短時間の接触ではなく、大地を踏みしめて長時間の探査を行う必要があります。そのため、三菱電機にとって「脚」の性能は、プロジェクト全体の成否を握る最重要課題となりました。
三菱電機が挑んだ「脚」の開発と苦闘
三菱電機のMMXプロジェクト統括部長、上原晃斉氏は開発の苦労をこう振り返ります。「衝撃を吸収するような機構を取り入れた着陸脚の開発が一番大変だった。一筋縄ではいかなかった」。当初はアポロ計画などで使用されたNASAの探査機を参考にしたものの、フォボスの特殊な環境に適応させるため、独自の機能や形状を追求する必要がありました。2016年ごろから始まった検討を経て、未踏の地に降り立つための技術が形作られました。
未知の天体への挑戦がもたらすもの
今回のミッションは、人類がこれまで到達したことのない未知の領域への挑戦です。フォボスという特異な環境で、探査機がどのように大地を捉え、試料を採取するのか。開発に携わった技術者らがこだわった「着陸脚」の性能が、その成否を分けることになります。MMX探査機は、フォボスから砂などの試料を地球へ持ち帰ることを目指しており、今後の打ち上げと運用が、宇宙探査の歴史において重要な一歩となることが期待されています。