兵庫県内の障害者福祉施設に勤務していた元職員の少女(当時16)が、利用者への暴行容疑で逮捕・勾留された後に不起訴となり、摂食障害で死亡したのは違法捜査が原因だとして、母親が国と兵庫県に約1億1000万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が2025年10月21日、神戸地裁(鳥飼晃嗣裁判長)で開かれた。国と県側は請求棄却を求めている。
障害者福祉施設での逮捕と勾留の経緯
sankei.comや神戸新聞などの報道によると、当時16歳だった少女(るなさん=仮名)の逮捕容疑は2025年2月、勤務先の福祉施設であったイベント中に、利用者のあごを複数回手のひらで押さえつけたというもの。日テレNEWS NNNによると、別の重度の知的障害がある利用者が女性利用者にかみつこうとしたのを止めに入ったところ、目撃した別の利用者から市役所へ通告があったとされる。その後、同年6月に兵庫県警明石署が暴行の疑いで少女と男性職員の2人を逮捕した。少女は18日間にわたって勾留され、接見も禁止されたという。
原告側と被告側の法廷における主張の対立
神戸地裁での初弁論で、原告側の母親は意見陳述で「暴行の申告自体が事実無根」と訴え、身体拘束の必要性や判断の根拠を明らかにするよう求めた。また、日テレNEWS NNNの報道では、逮捕された男性職員が「暴れる、殴られる、蹴られるのは正直、結構日常茶飯事のこと。それがまさか暴行って言われたら、僕からしたら正直納得できません」と当時を振り返っている。これに対し、国と県側は捜査の違法性や少女の死亡との因果関係を否定し、請求の棄却を求めた。兵庫県警は「捜査および留置施設における対応に国家賠償法上の違法はない」と主張し、神戸地検は「コメントは差し控える」としている。

釈放後の心身の急激な悪化と最期
18日間の勾留を経て釈放された少女は、取り調べによる精神的ショックから心的外傷後ストレス障害(PTSD)などを発症し、食事をとれない日々が続いた。神戸新聞によると、拘束期間中に体重が激減し、留置場で倒れて救急搬送されたという。釈放後も心身の不調が続き、同年12月14日に16歳という若さで低栄養状態により死亡した。亡くなる直前の体重はわずか20kgほどだったと日テレNEWS NNNは伝えている。母親は提訴後の会見で「あ子が捕まって出てきた日から、一度も涙もなく、ほほ笑むこともなく、笑うこともなかったですけど、亡くなるその日に涙だけ流して亡くなりました」と悲痛な思いを語った。
弁護団による捜査資料の公開要求
原告側の弁護士は、裁判を通じて16歳の少女に対してどのような取り調べが行われたのかを明らかにするため、取り調べの様子を録音・録画したデータなどの捜査資料の公開を求めている。sankei.comの報道によると、弁護団は「16歳少女に対してどんな調べが行われたのか。裁判を通して国民にも共有されるべきだ」と訴え、人質司法の問題にも向き合うよう求めた。母親も「『やってない』と訴える人の声を正面から聞いてください。命と尊厳を守ることを忘れないでください」と強く訴えている。

裁判の今後の行方と司法判断の焦点
裁判では、一連の逮捕や勾留といった身体拘束が法的に妥当であったかどうかが最大の争点となっている。警察や検察による捜査の適法性、そして少女の死亡との因果関係について、神戸地裁で今後さらに双方の主張や証拠の精査が進められる見通しである。