2026年10月、北朝鮮の金正恩総書記の妹である金与正氏が、韓国側による軍事境界線付近での警告射撃や放送に対抗し、国境付近への戦術的攻撃兵器の追加配備や拡声器放送の再開を検討していると表明した。これに対し、韓国軍は即時かつ断固たる対応を取る方針を示している。
金与正氏が予告した境界線付近への戦術兵器追加配備と拡声器放送の再開検討
朝鮮労働党の金与正(キム・ヨジョン)中央委員会副部長は2026年10月19日、北朝鮮の国営メディアを通じて談話を発表し、韓国側に対する新たな軍事措置を検討していることを明らかにした。北朝鮮の軍事指導部は、あらゆる偶発的事態への先制・制圧措置として、南側境界線付近への戦術的打撃手段の配備拡大や、対韓拡声器放送の再開を進めているという。
同氏は、同年8月1日から10月17日までの間に、韓国軍が境界線付近で2,870回に及ぶ警告放送を行い、201回にわたって警告射撃を実施したと主張した。韓国国防省は、必要に応じて警告放送を行っていることを認めつつも、運用上の詳細については確認を避けたうえで、これらは6月に運用が一時停止された大規模な対北朝鮮拡声器システムではなく、観測所に設置された小型スピーカーによるものだと説明している。

金与正氏は「わが軍の指導部は、いかなる偶発的事態にも備えた先制・制圧措置として、南部国境全域の近傍における戦術的攻撃手段の配備拡大および対韓国拡声器放送の再開を検討している」と述べた。
韓国軍合同参謀本部の反発と境界線をめぐる対立の背景
韓国軍の最高指揮官である合同参謀本部の晋永承(チン・ヨンスン)議長は、2026年10月20日に前線の作戦指揮官会議を主宰し、北朝鮮の主張を激しく非難した。韓国軍は、境界線を越えて接近・侵入する北朝鮮軍兵士を押し戻すための正当な防衛措置として警告射撃と放送を実施しており、北朝鮮がこれを挑発と決めつけて緊張の高まりの責任を転嫁することは受け入れられないとの立場をとっている。

9月の地雷爆発事故と国際社会への外交的対応のゆくえ
今回の緊張の高まりは、2026年9月21日に非武装地帯の西部地域で発生した地雷爆発事故が発端となっている。この事故で韓国軍兵士3人が負傷した。韓国国防省および国連軍司令部の調査により、北朝鮮側が軍事境界線の南側に意図的に地雷を埋設したことが確認され、停戦協定の明白な違反であるとして北朝鮮側に謝罪と残存地雷の撤去が求められている。
これに対し北朝鮮側は関与を否定し、金与正氏はこれを韓国側が仕組んだ「捏造された地雷爆発事件」であると主張した。韓国外交部は、10月20日の時点で、この爆発事故が北朝鮮軍による地雷埋設によるものであることを国際社会に伝えているが、国連安全保障理事会への書簡送付や追加の制裁措置などを巡っては、政府内部での協議や調整が続いており、具体的な対応の決定には至っていない。
専門家の間では、北朝鮮側が過敏に反応している背景として、韓国側による警告放送やビラ散布を通じて、体制側が隠そうとする南北の実態に関する情報が北朝鮮軍内部や境界線付近に露呈することを恐れている点が指摘されている。韓国軍は、北朝鮮がさらなる挑発に踏み切った場合には原則に基づき断固とした報復措置を取る構えを崩しておらず、今後の境界線周辺の動向が注視されている。