Weil, Gotshal & Manges(ヴェイル・ゴットシャル・アンド・マンジェス)は、パートナーの相次ぐ離脱や合併交渉の決裂を受け、計画的な事業縮小・閉鎖を進める方針を固めた。これにより、1世紀の歴史を持つ同事務所は解散の危機に瀕しており、昨年20億ドル以上の収益を上げた名門組織の急速な衰退に区切りがつくことになる。
経営陣の勧告による急速な解散手続きの開始
創設からおよそ一世紀を経た米国の名門法律事務所 Weil, Gotshal & Manges は、経営陣による慎重な協議の末、パートナー組織に対して秩序ある事業清算(ウインドダウン)を勧告したと発表しました。関係者への説明によると、パートナーによる正式な投票が数日内に行われる見通しです。
ニューヨークのマンハッタン、フィフス・アベニューのゼネラル・モーターズ・ビルに本拠を置く同事務所は、昨年約21億ドルの売上高を記録していました。しかし、相次ぐパートナーの引き抜きや大型合併交渉の破綻により、組織の維持が困難な状況に陥っていました。
1931年に Frank Weil、Sylvan Gotshal、Horace Manges の3名によってニューヨークで設立された同事務所は、世界各地に10以上のオフィスを構え、約1,200名の弁護士を擁するエリート法律事務所の一つとして知られてきました。
今回の清算方針について、事務所の広報担当者は「90年以上にわたり、Weil, Gotshal & Mangesはクライアントの最も重大な案件のいくつかにおいて助言する特権に浴してきました。戦略的選択肢に関する慎重な検討の結果、経営委員会はパートナーシップに対し、秩序ある清算を進めることを勧告しました」と公式声明で述べています。また、事務所側は事業清算のプロセスにおいてもクライアントへのサービスを継続する方針を示しており、再編実務を専門とする会社である AlixPartners が清算に関するアドバイザーとして起用されたと伝えられています。
相次ぐ有力パートナーの離脱と後継者人事の座礁
トップ人事の混乱も組織の動揺に拍車をかけました。長年事務所を率いてきたBarry Wolfの後任として、2025年2月に次期エグゼクティブ・パートナーへの就任が発表されていた Ramona Nee が、1月に控えていた就任を辞退する意向を周囲に伝えていました。
ボストンのプライベート・エクイティ部門パートナーであったNeeの辞退に加え、グローバル・プライベート・エクイティ共同ヘッドのDoug Warnerが Paul Weiss へ移籍することが報じられるなど、一連の人材流出に歯止めがかからない状態となりました。また、経営委員会のメンバーである Drew Tulumello が Davis Polk へ、 Caroline Zalka が Paul Weiss へ移籍する予定とされ、企業部門共同マネージング・パートナーの Lyuba Goltser も Sidley Austin へ加わると伝えられています。
ニューヨーク・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルなどの報道によれば、成長路線を維持するか小規模化するかを巡るパートナー間の戦略的意見の対立が水面下に存在し、Willkie Farr & Gallagher との間で進められていた合併交渉も不調に終わっていました。
破綻・再編業務における歴史的な実績と業界への衝撃
数々の歴史的企業破綻や大型再編を手がけてきた法律事務所が自らの解散に向かうという事態に対し、法曹界や金融市場からは驚きの声が上がっています。Weil は2008年の金融危機において Lehman Brothers の代理人を務めたほか、Enron の破綻処理、そして General Motors のチャプター11(連邦破産法第11条)手続きにおいても主要な代理人として関与していました。

ゼネラル・モーターズの破綻手続きにおいてはわずか40日間での再建を実現したと自負しており、さらに Microsoft による687億ドルの Activision Blizzard 買収や AT&T による DirecTV 買収といった超大型案件でもアドバイザーを務めていました。

今回の解散劇は、2012年に破綻した Dewey & LeBoeuf の規模を凌駕し、近代のビッグ・ロー(大手法律事務所)の歴史において最大の破綻事例になると指摘されています。ニューヨークのゼネラル・モーターズ・ビルにある約38万平方フィートのオフィス賃借権が最大の負債の一つとして残される中、事務所側は破産手続きの申し立てを行わずに未収報酬の回収を進めながら清算を完了させる意向を示しています。
ドイツおよび欧州市場への深刻な影響
米国のみならず、ドイツのフランクフルトやミュンヘンを中心とするDACH地域(ドイツ、オーストリア、スイス)における事業展開や欧州全体のオフィスにも深刻な影を落としています。ロンドンオフィスでは約45名のパートナーを含む約200名の弁護士と120名以上のビジネスサービススタッフが所属しており、M&Aパートナーの Murray Cox やオフィス共同ヘッドの David Avery-Gee、ファイナンス部門ヘッドの Tom Richards ら幹部層の離脱が相次いでいました。

Sebastian PaulsやGibson Dunn出身のDr.といった人材を迎え入れてプライベート・エクイティやM&A分野の強化を急ピッチで進めていましたが、今回の突然の風向きの変化により、クライアント企業は法務チームの将来について深刻な懸念を抱く事態となっています。