ロシアで反戦の絵を描いたことが原因で、12歳から危険な生活を強いられてきたマーシャ・モスカリョワさんは、現在16歳となり、父親のアレクセイさんと共にフランス東部の村でひっそりと暮らしている。CNNの報道によると、二人は一時滞在ビザを取得し、身の安全を危惧しながらも自由な環境で生活を続けているという。
モスクワ郊外のエフレモフで描かれた反戦の絵と教員の指示
2022年のロシアによるウクライナ侵攻からわずか数週間後、モスクワから南へ約300キロ離れたエフレモフの学校で事件は起きた。CNNが報じたところでは、担任教師がクラスの生徒全員に対し、ロシア軍を応援する絵を描くよう指示を出したという。ほとんどの生徒が戦車や好戦的な「Z」の文字を描く中、当時12歳だったマーシャさんは別のものを描くことを選んだ。色鉛筆で描かれたその作品には、ロシアの爆弾から子どもを守る母親の姿が表現されていた。ウクライナ国旗のそばには「ウクライナに栄光あれ」、ロシア国旗のそばには「プーチンがいなければ戦争はない」とそれぞれ書き込まれていた。クラスメートの一人がその絵を見たことがきっかけとなり、警察の手に渡ったとマーシャさんは振り返っている。
父親の投獄と孤児院への強制収容がもたらした生活の分断
子どもの描いた一枚の絵を発端として、家族の日常は破壊された。CNNによると、父親のアレクセイ・モスカリョワさんは「ロシア軍の名誉を傷つけた」という罪に問われ、懲役2年の実刑判決を受けた。当時アレクセイさんが一人で育てていていたマーシャさんは、親元から引き離されて孤児院へと送られることになった。釈放後、二人はアルメニアを経由して今年初めにフランスへと逃れ、現在は小さな村で身を寄せ合って暮らしている。服役の影響でアレクセイさんの健康状態は悪化しているものの、母語ではない環境の中で教育を受ける娘の姿を誇りに思っていると語っている。
ロシア国外からの発信と残された原画の行方
学校に通う時間以外で、マーシャさんはユーチューブやソーシャルメディアを活用し、ロシア国内外の人々へ向けてメッセージを発信し続けている。CNNの取材に対して、マーシャさんはプーチン大統領だけでなく、握手を交わした米国のトランプ大統領にも批判の矛先を向けていることを明かした。最も驚くべきことに、逮捕や投獄、孤児院での生活という過酷な経験を経たにもかかわらず、すべての発端となったあの色鉛筆の絵は、逃避行の最中に幼い頃のノートの中から見つかり、今も手元に残されているという。警察は子どもの持ち物であるその絵を捜索の対象外としており、没収されることはなかった。
民主主義と自由な社会を求めるティーンエイジャーの思い
権威主義の本質は、いかなる子どもじみた異議をも認めないことにあるとマーシャさんは指摘する。CNNの報道で、マーシャさんは「臆せずに真実を語る子どもが、一人ではなく千人、そして大人が百万人に増えれば、ロシアをより良い方向へ変えることができる」と訴えている。ロシアが民主的で自由な国になるまで何十年かかるのか分からないとしつつも、かつてのように言葉や意見によって迫害されない国にいることの重要性を強調した。ロシアへいつの日か帰国することは遠い夢でありながらも、ソーシャルメディアを通じた発信の手を緩めることはない。今後の政権の行方や社会の変化が見通せない中、父と娘のフランスでの慎ましい生活は続いている。