ケニアの裁判所は10月19日、子ども190人を含む191人の殺人容疑で、新宗教団体「グッド・ニュース・インターナショナル・教会」の指導者ポール・マッケンジー被告ら29人の有罪を言い渡した。同国海岸部の森林地帯で多数の遺骨が見つかった事件で、司法判断が下されたのは初めてとなる。
子ども190人と成人1人を死亡させた「飢餓カルト」の判決
ポール・マッケンジー被告はかつてタクシー運転手として働き、2003年に同妻とともに団体を設立した。マリリンを拠点に活動を展開した同被告は、教育や医療を拒絶する過激な終末論を説いた。新型コロナウイルスの流行期には社会的な不安に付け込み、世俗の困難から逃れるために救済を求めるよう信者を煽動した。2019年に教会やテレビ局が閉鎖された後、信者らを率いてキリフィ郡のシャカホラ森林へ移住した。
司法長官や警察の発表によると、同被告は1973年にクワレ郡ルンガルンガで10人きょうだいの第5子として生まれ、かつてはマリンディで小さな商店を営み、後にタクシー運転手となった経歴を持つ。2012年にはテレビ会社を登録し、のちに数千人の登録者を持つYouTubeチャンネルで説教を配信していた。国家人権委員会(KNCHR)の報告によれば、当局は2017年に同被告のマリンディの敷地を捜索し、就学していない多数の子どもを発見したものの、当時は起訴にとどまり活動の継続を許した。
裁判では、教団がアメリカ合衆国や国際連合、さらにはカトリック教会を敵視する反西欧的な思想を広め、出生証明書やデジタル身分証明書の焼却を信者に求めていたことが示された。また、現代の医療行為や学校教育を「悪」や悪魔的であると断じ、病院に行くことや子どもを登校させることを固く禁じていたことが複数の証言で裏付けられている。
森林の集団墓地と死の階層構造
2023年4月、警察が家族からの情報提供を受けて森林に立ち入ったことから、組織的な犯行が明るみに出た。その後、捜査当局が浅い墓から次々と遺体を掘り起こし、これまでに確認された総数は400体を超えている。検察側の主張によれば、マッケンジー被告は厳格な順序に基づく断食計画を実行していた。
証言によれば、子どもが最初に絶食させられ、その後に十代の若者、女性、そして男性の順で死に至る構造が作られていた。司法解剖や警察の報告では、死因の多くは餓死であったが、窒息死や首の圧迫、頭部への外傷の痕跡が見つかった事例もあった。また、一部の子どもは隔離され、保護者が見守る中で食事を与えられなかった実態が裁判で明らかにされた。

広大なシャカホラ森林のなかで、信者らはポリ袋や茅葺きで作られた粗末な小屋に身を寄せ、エルサレムやユダヤといった聖書の地名にちなんで区切られた区画で生活していた。森林内の実態を知る関係者の証言では、信者らは現地の開墾可能な土地の提供を約束されて誘い込まれたが、実際には武装した組織が配備され、断食を強制されて死に至る過酷な環境に置かれていたことが明らかになっている。
遺族の訴えと司法・行政への責任追及
モチャチェ判事による言い渡しが行われたモンバサの裁判所外には、家族を失った遺族らが集まった。この裁判で8人の親族を亡くしたフランシス・ワンジェさん(62)は、判決前に関係機関の過去の対応への怒りをあらわにしつつ、今後の抑止力となる厳正な判断を求めた。

フランシス・ワンジェは、「私たち家族にとって本当に過酷なことであり、心理的な問題の点でも計り知れない負担となってきました……私はこの日をずっと待ち望んでいました」と語った。
事件の発覚後、ケニア国内では過去に二度も逮捕歴がありながら釈放されていたマッケンジー被告の動向をなぜ当局が阻止できなかったのかを巡り、法執行機関の検証や宗教団体の規制強化を求める声が強く上がっている。裁判において被告側の弁護人は、今回の事件が主に状況証拠や伝聞、決定的ではない鑑識結果に基づいていると主張し、マッケンジー被告自身も殺人やテロリズムなどの容疑について無罪を主張し続けている。
残る捜査と今後の司法手続き
今回の有罪認定は191人の死亡に関するものだが、森林から発見された他の遺体についての捜査や裁判はなお続いている。さらに、今年1月にはシャカホラから離れたクワ・ビンザロ村で見つかった52人の遺体に関連して、マッケンジー被告が別件で起訴されており、同被告は無罪を主張している。今回有罪となった被告らの量刑言い渡しは、11月6日に予定されている。