日ソ共同宣言の署名から19日手前で70年の節目を迎えた中、北方領土を巡る平和条約交渉は停滞したまま日露関係は悪化の一途をたどっている。木原官房長官は同日の記者会見で、条約未締結の現状を重く受け止める考えを示した。ウクライナ侵略や日本人記者の拘束事案が重なり、事態打開の兆しは見えない。
日ソ共同宣言70年と進まない平和条約交渉
日本とソ連が第2次世界大戦後の新たな関係を築く出発点となった日ソ共同宣言が1956年10月の署名から70年の節目を迎えたと、yomiuri.co.jpなどが報じた。平和条約締結後に北方領土の歯舞群島と色丹島を引き渡すと明記された同宣言だが、北方領土問題を含む交渉は停滞したままである。木原官房長官は19日の記者会見で、今もなお条約が締結されていないことを重く受け止めていると述べた。その上で、日露関係が厳しい状況にある中でもロシア側と意思疎通を続け、事態打開に向けて取り組んでいく考えを語っている。
ウクライナ侵略とロシアによる一方的な交渉中断
2022年のロシアによるウクライナ侵略後、日本政府が米国や欧州と協調して対露制裁を強めると、ロシアは平和条約交渉を一方的に中断した。日本側は交渉再開を呼びかけているものの、ロシア側に応じる気配はない。プーチン・ロシア大統領は今年9月の発言で、日本の過去の政権と平和条約を協議したことを念頭に議論する用意はあったと振り返る一方、日本側が徐々に関係を悪化させ始めたと非難した。日ソ共同宣言署名から60年の節目にはモスクワのロシア外務省で記念行事が開かれたが、70年を迎えた今回は祝賀ムードがない状況となっている。
択捉島への中国代表団招き入れと実効支配の強化
プーチン大統領は8月に初めて北方領土の択捉島を訪問した。さらに今月13日には、ロシアが戦略的連携を強める中国から黒竜江省代表団を同島に招き入れ、実効支配の動きを加速させている。こうしたロシア側の動きについて、笹川平和財団の畔蒜泰助上席研究員はインタビューで、サハリンでの日本人記者拘束と併せて考えると、ロシア側が一連の動きを通じて制裁を含む日本の対ロ政策の変更を求めて圧力をかけ始めたとの見方を示している。

北海道新聞記者のスパイ容疑拘束と領事面会の不履行
ロシアの情報・治安機関である連邦保安局は13日、極東サハリン州駐在の北海道新聞の日本人男性記者をスパイ容疑で拘束・逮捕したと発表した。日本と旧ソ連が定め、現在も有効とされる日ソ領事条約とその関連文書は、拘束後1から3日以内に相手政府に通報し、遅くとも4日以内に本人と領事面会ができると定めている。日本政府は記者の健康状態や拘束理由の確認のため面会を求めているが、期限を過ぎても実現しておらず、取り決めは事実上ほごにされているとyomiuri.co.jpが伝えた。

今後の日ロ関係と対話継続を模索する日本政府の立場
日本政府は関係が冷え込む中でも対話は継続する考えを崩していない。日本企業が極東の石油・天然ガス開発事業であるサハリン2に権益を持っており、経済的利益を確保する必要があるためだ。一方で、笹川平和財団の畔蒜上席研究員は、戦争が終わらないと関係正常化のプロセスは始まらないと指摘しており、信頼を醸成しながら長期戦でその先の関係につないでいくことが望ましいとしている。日ソ共同宣言から70年を迎えた日露間で、具体的な打開の糸口は見いだせないまま時間が経過している。