第二次世界大戦で連合軍最高司令官を務めたドワイト・アイゼンハワー元大統領ゆかりの貴重な地球儀が、ピート・ヘグセス国防長官の執務室への移送中に破損していたことが明らかになった。.
アイゼンハワーゆかりの歴史的資料が破損
破損したのは、国防総省に保管されていた直径約76センチの大型地球儀である。この地球儀は、アイゼンハワーが1942年に陸軍参謀本部で作戦立案に携わっていた際、実際に使用していたものとされている。米紙ワシントン・ポストが10月22日に報じ、アメリカ陸軍も事故の発生を認めた。公開された写真には、球体が回転式の金属製台座から外れ、床に破片が散乱する様子が写っている。同紙の報道によれば、南極大陸付近には数センチ大の穴が開くなどの損傷が確認された。
専門家不在のまま強行された移送作業
事故は2月3日、ヘグセス国防長官の執務室へ地球儀を運び込む際に発生した。通常、こうした歴史的価値の高い資料を移動させる際は、専門家の監督下で細心の注意を払って作業が行われる。しかし、当時は政府機関の一部閉鎖に伴い、陸軍の歴史資料担当者が一時帰休となっていた。報道によると、スタッフは専門家の復帰を待たずに自ら移動作業を進め、その過程で地球儀を誤って落下させたという。結果として、歴史的な資料がずさんな管理状況の中で損壊する事態となった。
「レプリカ」か「本物」かで食い違う説明
今回の破損をめぐり、国防総省の当局者は「落としたのはアイゼンハワーの地球儀のレプリカだった」と説明している。同当局者は「事故は起こるものだ。けが人が出なかったことを喜んでいる」と述べ、地球儀については現在修復中であると強調した。さらに、ワシントン・ポストによる報道を念頭に「取るに足らない話にまた時間を費やしている」と批判している。一方で、NBCニュースは匿名のアメリカ政府当局者3人の証言や写真に基づき、破損したのは本物の地球儀であったと報じており、公式見解と報道の間で事実関係に食い違いが生じている。
軍事史家が指摘する「計画の重要性」
綿密な作戦立案で知られたアイゼンハワーにとって、地球儀は単なる装飾品ではなかった。第二次世界大戦中、海を隔てた地点間の距離を測り、軍需物資の輸送計画を練るための重要なツールとして活用されていた。元陸軍准将で軍事史家のタイ・サイデュール氏は、今回の事故について「計画のまずさと実行のひどさを象徴している」と厳しく批判した。同氏は、陸軍が常に世界規模で事態を予測し計画を立てる重要性を、アイゼンハワーの地球儀が象徴していたと指摘する。
また、サイデュール氏は、今回の事故によって地球儀に新たな歴史が刻まれてしまったと皮肉り、もはや単なる「アイゼンハワーの地球儀」ではなく、「ヘグセスの傲慢さを象徴する地球儀」にもなってしまったと述べ、実に残念なことだと語った。
問われる管理体制と今後の歴史的評価
2022年には、同じくアイゼンハワーゆかりの別の大型地球儀がアラバマ州内で移送された際、専門業者が作業を担当しており、適切な手順の重要性が改めて浮き彫りとなった。今回の破損事故により、この地球儀には「ヘグセスの傲慢さ」という新たな歴史が刻まれてしまったとサイデュール氏は皮肉を込めて指摘する。国防総省が主張する「レプリカ説」と、メディアや当局者から指摘される「本物説」の真相は依然として明確ではなく、歴史資料の取り扱いをめぐる管理体制の不備が、今後どのように検証されるのかが焦点となっている。
