2026年10月29日、世界最大の暗号資産取引所であるバイナンスが大規模なサイバー攻撃を受け、ホットウォレットから63億ドル相当のデジタル資産が約20分間にわたって不正流出した。この事件を受け、米連邦捜査局(FBI)は同年11月1日に、北朝鮮の軍事組織に属するハッカー集団が犯行に関与したと発表した。
バイナンスが資産を補填して出金を再開
事件発生後、バイナンスは一時的に出入金を停止し、セキュリティ体制の確認を進めた。同社は自社の企業財務、先物保険基金、およびユーザー保護のためのビットコイン réserve である「Secure Asset Fund for Users(SAFU)」から資金を拠出し、盗まれた資産の約95%にあたる約60億ドルの代替トークンを迅速に買い戻したと発表した。
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バイナンスの創業者であるCZことチャンペン・ジャオは、自身のX(旧Twitter)アカウントで「バイナンスは本件による金銭的影響を完全にカバーする」と表明した。
その後、バイナンスは11月1日の日曜日に取引と出金を段階的に再開した。イーサリアム、USDT、USDC、BNBスマートチェーン上のトークンのほか、ドージコインやアバランチなどの取引も順次復旧した。取引再開に伴い、ユーザーによる大規模な出金と入金が発生し、暗号資産分析プラットフォームのデフィラマ(DefiLlama)のデータによると、同日には36億4千万ドルの純流出が記録された。しかし、バイナンス側はこれが同社が保有する総資産1,710億ドルのわずか2.1%にとどまるものであり、出金量はその後通常の水準へ向けて減少・安定していると説明している。
FBIと分析企業が北朝鮮の関与を特定
FBIは10月31日、今回の不正出金について「TraderTraitor」と呼ばれる北朝鮮の高度なサイバー犯罪グループが実行したと正式に認定した。米国の法執行機関や、チェイナリシス(Chainalysis)、エリプティック(Elliptic)、TRMラボ(TRM Labs)といった複数のブロックチェーン分析企業は、攻撃者が盗まれた資産を隠蔽・資金洗浄するために、11のブロックチェーンにまたがる約12,000個のウォレットと40,000回以上のトランザクションを駆使していることを確認した。ハッカーグループは、トロン(Tron)ネットワークを経由して資金を分散させ、イーサリアムやその他のチェーンへとブリッジさせる手法をとっている。
北朝鮮が関与を否定し当局が警戒
こうした国際的な非難に対し、北朝鮮政府は関与を強く否定している。朝鮮中央通信(KCNA)が伝えたところによると、金正恩朝鮮労働党総書記の妹である金与正(キム・ヨジョン)労働党副部長は11月3日に談話を発表し、FBIが北朝鮮びいきのハッカー組織を首謀者として名指ししたことについて「重大な政治的挑発」であると非難した。さらに、米国外交当局が世界各地のサイバー犯罪の責任をすべて北朝鮮に転嫁しようとしている「悪質な企て」であると主張し、サイバー空間におけるあらゆる不正行為に一貫して反対する立場を強調した。
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一方で、米国の法執行機関や金融当局は警戒を強めている。商品先物取引委員会(CFTC)のマイケル・セリグ委員長は、今回の事件が同委員会の提案する暗号市場規制の必要性を証明するものであると述べた。ブロックチェーン分析企業のエリプティックは、ハッカーが過去のバイビット(Bybit)ハッキング事件の時よりも慎重かつ複雑な手口で資金のミキシングや分散を行っており、残された資金が数ヶ月かけてビットコイン等へ変換され、OTC(店頭)ブローカーなどを通貨じて現金化される可能性があると分析している上で、「ハッカーは過去のバイビットハッキング事件の時よりも慎重かつ複雑な手口で資金のミキシングや分散を行っている」と指摘している。