2022年のノルドストリーム・ガスパイプライン爆破事件をめぐり、ウクライナ人の元軍人セルヒイ・クズネツォフ被告の裁判が2026年10月14日、ドイツ・ハンブルクのハンザ同郷高等地域裁判所で始まった。被告側は起訴内容の却下を求めている。
戦後ヨーロッパにおける最大規模のサボタージュ事件の一つとされるウクライナのエネルギー網関連の破壊工作で、ウクライナ軍の特殊部隊員であったセルヒイ・クズネツォフ被告が法廷に立った。
検察側は、同被告が民間インフラへの攻撃、爆発物の使用、財物の損壊、公共サービスの妨害、そして戦争犯罪の「共犯」としての罪に問われていると主張している。
バルト海の水深80メートルで起きた爆破
事件の発端は2022年9月にさかのぼる。ロシアとドイツを結ぶ海底ガスパイプライン「ノルドストリーム」が、バルト海のデンマーク領ボーンホルム島近海の水深70メートルから80メートルの間で相次いで爆破された。
検察側の主張によれば、クズネツォフ被告らはドイツの港町ロストックから出発したヨットを使用し、偽造IDや仲介者の助けを借りてドイツ企業からレンタルしたとされる。被告は20キログラムから27キログラム(約31ポンドから62ポンド)に及ぶ少なくとも4個の爆発物の起訴を組織し、実行した疑いが持たれている。
明かされた「発言禁止」の防衛線
初公判の冒頭で、50歳のクズネツォフ被告の弁護団はすべての起訴内容の却下を正式に申し立てた。被告自身は裁判で沈黙を貫いている。
弁護側が掲げる最大の論点は、被告が軍務に関する業務について公に発話を禁じられているという点にある。弁護人のイェス・メイヤー=ローカンプ弁護士は法廷で次のように述べた。
「彼の2人の直属の上官は、弁護士に対しても含め、いかなる発言の権限も彼にはないと言い渡した。ドイツ法の下では、発言できない者は有罪判決を受けることができない。」 イェス・メイヤー=ローカンプ、弁護士
さらに同弁護士は、1日23時間施錠され単独監禁に等しいとされる被告の拘禁環境についても改善を訴えた。また、弁護側は同被告の指紋がヨットから検出されておらず、目撃証言もないと主張している。
イタリアでの拘束からハンブルクへの移送
クズネツォフ被告は前年にイタリアで拘束され、ドイツへと身柄が引き渡された。その後ドイツの裁判所で審理が進められている。

国際社会や各国政府の間では様々な反応が見られ、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、誰が実行し誰が命令を下したのかが名指しされることを期待すると述べた。一方、ウクライナの高官はAFPに対し、キエフはこの裁判に対して何ら期待を持っていないと語っている。
長期化する審理と広がる波紋
ハンブルクのハンザ同郷高等地域裁判所では、これまでに12月17日までの16回の公判日程が指定されており、さらに2027年の1月および2月にも追加の審理が予定されている。判決がいつ言い渡されるのかは、現時点では未定である。

裁判所の外では、ウクライナ支持者らが「ロシアはテロリスト」といったプラカードを掲げて抗議活動を行った。一方で西側諸国の一部からは、今回の攻撃がエネルギー価格の高騰を招き、ヨーロッパ最大の経済を揺るがしたガス危機を悪化させたという非難の声も上がっている。