フランス中部の現代美術館から、サルバドール・ダリが青銅製のカバーを手がけた貴重な美術品『黙示録のブック』が盗み出されました。クレルモンフェランの検察当局は捜査を開始し、美術品を「例外的な唯一無二の作品」と位置づけて行方を追っています。
イソワールの現代美術館で起きた『黙示録のブック』盗難事件の全貌
美術館のオーナーであるクリスチャン・カルツォス氏は、月曜日の午前遅くに建物の大きな門の一つがこじ開けられていることに気づき、被害を確認しました。現地メディアの報道によると、盗まれたのは作品全体ではなく、金や宝石、真珠、貝殻で装飾された重量約150キログラムの青銅製カバーです。事件当時、イソワールではこのカバーと一部の羊皮紙ページが展示されていました。
重さ150キロの青銅カバーとプロジェクトの歴史
ウクライナメディアの報道によると、この唯一無二の出版企画はフランスの美術出版社ジョセフ・フォレが1958年に始動させたものです。制作は1959年から1961年にかけて行われました。『ヨハネの黙示録』を題材に、ダリを含む7人の画家と、ジャン・コクトーやエミール・シオランを含む7人の作家が参加しました。パトモスのギリシャの島で西暦97年に書かれた新約聖書の聖ヨハネのテキストを含んでおり、レオノール・フィニ、ジョルジュ・マチュー、ベルナール・ビュフェといった主要な芸術家たちによってイラストが描かれています。
約150枚の羊皮紙に手書きで記された総文字数は約9万3,000から9万5,000文字に及び、すべてを広げるとおよそ150メートルに達します。ブルガリアの報道などが伝えるところでは、ダリの手による青銅製のカバーと合わせた総重量は約210キログラムにのぼります。1960年の発表当時には200万フランスフラン(フランス・アンティーク・新聞紙によれば当時の価値でおよそ305,000ユーロに相当)と評価され、当時は「世界で最も高価な本」と称されました。その後、1961年から1972年の間に世界中で約150回にわたり展示され、スイスに保管された後、日本の所有者を経て、2003年にフランス人のカルツォス氏によって取得されました。
フランスの遺産を奪われた怒りと計り知れない損失
歴史的な名作の損失に対して、地元当局や所有者は深い衝撃と憤りをあらわにしています。イソワールのベルトラ・バロ市長は損害について「算出不能である」と述べ、この作品を「一生涯の仕事」と表現しました。また、オーナーのカルツォス氏はラジオ局の取材に対し、次のような激しい怒りの言葉を語っています。

「彼ら(泥棒たち)は昨夜、フランスを暗殺した。フランスの遺産を暗殺したのだ」
クリスチャン・カルツォス、美術館オーナー(The Telegraphの報道に基づく)
カルツォス氏は2003年に日本からこの作品を取得しました。報道によれば、彼は作品が競売にかけられてバラバラに売り払われるのを防ぐために自ら買い取り、イソワールの私設美術館で大切に管理してきた経緯があります。
未解決の疑問とヨーロッパで相次ぐ美術館の被害
現在に至るまで、犯行グループがいかにして厳重な警備を突破し、あるいは150キログラムもの巨大な青銅カバーをどのようにして運び出したのか、その具体的な手口や人数は一切明らかにされていません。クレルモンフェランの検察当局と憲兵隊が捜査を進めていますが、現時点で逮捕者の発表はなく、盗まれた正確な範囲についても調査が続けられています。

アート・ニュースペーパー紙の指摘では、今回の事件はヨーロッパの文化施設を狙った一連の美術品盗難の最新の事例となります。先月にはフランス・ニース近郊のルノワール美術館からピエール=オーギュスト・ルノワールの絵画2点が盗まれ、8月にはシチリア島の美術館からルネサンス期の巨匠アントネッロ・ダ・メッシーナの作品4点が持ち去られるなど、文化財の安全確保を巡る懸念が欧州各地で高まっています。