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ケニアの論文代筆ビジネスが崩壊、ChatGPTが奪った若者の生活の糧

人工知能(AI)の急速な普及により、ケニアで数万人が従事していた海外の大学生向け論文代筆ビジネスが激減し、グローバル労働市場の底辺を支えてきたデジタルギグワークが急速に縮小していると、ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。 テレシオス・ブンディが首都ナイロビで始めた論文代筆ビジネス ケニアの農村出身であるテレシオス・ブンディは、一族で初めて大学に通うため2011年に首都ナイロビへ移り住んだ。友人から紹介されたのは、海外の大学生の論文をオンラインで代筆する仕事だった。最初の依頼はガルシニアという果物の健康効果に関する2ページの論文で、3時間の作業で7ドルを稼いだ。お金が必要だった当時、それは命綱だったとブンディは振り返る。ときには1日3本を仕上げながら、その後の12年間で2500本以上の論文を執筆した。公衆衛生の学位取得に向けた自身の勉強を進めつつ、はるか遠くにいる工学、医学、コンピュータサイエンスを学ぶ学生たちの課題を代行した。依頼人の中には、進捗状況を把握させるために学校のプラットフォームのログイン情報を渡してくる学生も存在した。 オンラインギグワークの黄金期と学生たちの実態 当時のブンディは知る由もなかったが、彼はオンラインギグワークの黄金期に身を置いていた。仕事を切望していたケニア、フィリピン、インドといった地域の高学歴な若者たちは、インターネット接続を手にしてデジタル経済の隙間にチャンスを見出した。経済的階層のより上位にいる人々がやりたがらないタスクをオンラインでこなすことで、彼らは収入を得ていた。ブンディは2015年に大学を卒業後、公衆衛生のキャリアを後回しにして1本あたり40〜70ドルで論文執筆を請け負うビジネスを立ち上げた。大学の近くに家を借り、デスクと高速インターネット、マットレスを詰め込んで、雇い入れた学生たちと共同で作業にあたった。学生たちは授業の合間に働き、公衆衛生の分野で得られる額の少なくとも5倍を稼ぎ出し、コーヒー農家の両親へ仕送りもおこなった。 ChatGPTの登場による論文代筆市場の崩壊 2022年にOpenAIがChatGPTを公開すると、世界中の大学で状況が一変した。学生たちはAIが代わりにしてくれるのに、なぜ遠くのフリーランサーにお金を払う必要があるのかと考えるようになった。ケニアの論文代筆の仕事は減り始め、報酬単価の下落と案件数の激減を経て、この産業はほとんどゼロにまで縮小した。AIがこれほどのことができるとは想像もしなかったとブンディは述べている。この運命を辿ったのは彼だけではない。ケニアの人々はアップワークやファイバーといったフリーランスのプラットフォームを通じ、会議の文字起こしやフェイスブックの投稿にフラグを立てる仕事も担っていたが、そうした機会も次から次へと萎んでいった。研究者の推計によると、2020年代初頭のピーク時には、ナイロビ市内で少なくとも4万人が他人の宿題代行によって報酬を得ていた。論文執筆者たちは新車のスバルを乗り回し、最新のスマートフォンを持ち、クラブのVIPテーブルを予約していたが、急落後にブンディは論文代筆ビジネスを畳むことになった。 グローバル労働市場の底辺を解体するAIの衝撃 世界中の技術者、経済学者、政府などがAIの未来について議論を重ねるなか、ケニアの実態は、このテクノロジーがすでにグローバル労働市場の底辺にある梯子を解体しつつあることを示している。グローバルギグエコノミーを研究してきた英オックスフォード大学教授のマーク・グラハムは、ケニアだけの問題ではなく、AIが参入し労働市場の大部分を奪い去ったと指摘する。新たなキャリアの開拓に苦労したブンディは現在、ドイツ政府の開発支援機関で働き、ケニアの若者がデジタルエコノミーでチャンスを見つける手助けをしている。AIは銀行家や会計士だけでなく、エンジニアや建築家も含めてあらゆる人を狙いに来ていると、彼は自身の経験をもとに警鐘を鳴らしている。

クーリエ・ジャポン

人工知能(AI)の急速な普及により、ケニアで数万人が従事していた海外の大学生向け論文代筆ビジネスが激減し、グローバル労働市場の底辺を支えてきたデジタルギグワークが急速に縮小していると、ニューヨーク・タイムズ紙が報じた。

テレシオス・ブンディが首都ナイロビで始めた論文代筆ビジネス

ケニアの農村出身であるテレシオス・ブンディは、一族で初めて大学に通うため2011年に首都ナイロビへ移り住んだ。友人から紹介されたのは、海外の大学生の論文をオンラインで代筆する仕事だった。最初の依頼はガルシニアという果物の健康効果に関する2ページの論文で、3時間の作業で7ドルを稼いだ。お金が必要だった当時、それは命綱だったとブンディは振り返る。ときには1日3本を仕上げながら、その後の12年間で2500本以上の論文を執筆した。公衆衛生の学位取得に向けた自身の勉強を進めつつ、はるか遠くにいる工学、医学、コンピュータサイエンスを学ぶ学生たちの課題を代行した。依頼人の中には、進捗状況を把握させるために学校のプラットフォームのログイン情報を渡してくる学生も存在した。

オンラインギグワークの黄金期と学生たちの実態

当時のブンディは知る由もなかったが、彼はオンラインギグワークの黄金期に身を置いていた。仕事を切望していたケニア、フィリピン、インドといった地域の高学歴な若者たちは、インターネット接続を手にしてデジタル経済の隙間にチャンスを見出した。経済的階層のより上位にいる人々がやりたがらないタスクをオンラインでこなすことで、彼らは収入を得ていた。ブンディは2015年に大学を卒業後、公衆衛生のキャリアを後回しにして1本あたり40〜70ドルで論文執筆を請け負うビジネスを立ち上げた。大学の近くに家を借り、デスクと高速インターネット、マットレスを詰め込んで、雇い入れた学生たちと共同で作業にあたった。学生たちは授業の合間に働き、公衆衛生の分野で得られる額の少なくとも5倍を稼ぎ出し、コーヒー農家の両親へ仕送りもおこなった。

ChatGPTの登場による論文代筆市場の崩壊

2022年にOpenAIがChatGPTを公開すると、世界中の大学で状況が一変した。学生たちはAIが代わりにしてくれるのに、なぜ遠くのフリーランサーにお金を払う必要があるのかと考えるようになった。ケニアの論文代筆の仕事は減り始め、報酬単価の下落と案件数の激減を経て、この産業はほとんどゼロにまで縮小した。AIがこれほどのことができるとは想像もしなかったとブンディは述べている。この運命を辿ったのは彼だけではない。ケニアの人々はアップワークやファイバーといったフリーランスのプラットフォームを通じ、会議の文字起こしやフェイスブックの投稿にフラグを立てる仕事も担っていたが、そうした機会も次から次へと萎んでいった。研究者の推計によると、2020年代初頭のピーク時には、ナイロビ市内で少なくとも4万人が他人の宿題代行によって報酬を得ていた。論文執筆者たちは新車のスバルを乗り回し、最新のスマートフォンを持ち、クラブのVIPテーブルを予約していたが、急落後にブンディは論文代筆ビジネスを畳むことになった。

グローバル労働市場の底辺を解体するAIの衝撃

世界中の技術者、経済学者、政府などがAIの未来について議論を重ねるなか、ケニアの実態は、このテクノロジーがすでにグローバル労働市場の底辺にある梯子を解体しつつあることを示している。グローバルギグエコノミーを研究してきた英オックスフォード大学教授のマーク・グラハムは、ケニアだけの問題ではなく、AIが参入し労働市場の大部分を奪い去ったと指摘する。新たなキャリアの開拓に苦労したブンディは現在、ドイツ政府の開発支援機関で働き、ケニアの若者がデジタルエコノミーでチャンスを見つける手助けをしている。AIは銀行家や会計士だけでなく、エンジニアや建築家も含めてあらゆる人を狙いに来ていると、彼は自身の経験をもとに警鐘を鳴らしている。

執筆者について: nipponese

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