コンゴ民主共和国東部でエボラ出血熱が猛威を振るう中、感染や隔離施設への恐怖から、母親や子どもたちが医療機関での受診や予防接種を避ける動きが広がっている。国連機関などのデータによると、一部地域では妊産婦の死亡数が急増し、小児の定期予防接種率が半減する深刻な事態となっている。
イトゥリ州における妊産婦死亡数の急増と受診控えの実態
コンゴ民主共和国東部で続くエボラ出血熱の流行は、感染そのものの脅威にとどまらず、地域の一次医療体制全体に深い影を落としている。国連の統計によると、イトゥリ州では2026年5月から7月にかけての妊産婦の死亡数が、前年同期と比べて約70%も急増した。保健医療従事者や支援機関は、この急増の背景にある最大の要因として、エボラウイルスへの感染や隔離施設に対する根強い恐怖を挙げている。
国連人口基金(UNFPA)の発表では、流行が始まってからの5月から7月の期間において、病院での出産が30%以上減少し、産科合併症に対する治療も50%減少したことが示されている。東部ブテンボ市にあるマシキ医療センターでは、エボラ流行が宣言されて以来、出産数が急減していると現地看護師らがロイター通信に証言している。
「私たちが渡す薬にはエボラウイルスが入っていると彼女たちは考えています」
リリアン・アドロンガ(Liliane Adronga)、ブテンボのマシキ医療センター主任看護師(ロイター通信の報道より)
アドロンガ看護師は、女性たちが手遅れになるまで受診を避ける傾向があることを説明し、最近では未治療のマラリアに苦しみながら子どもを失ったとみられる事例があったことを振り返った。
ブテンボにおける根強い誤解と小児ワクチンの大幅な落ち込み
医療機関に対する不信感は、妊産婦のケアだけでなく、子どもたちの健康を守るための予防接種事業にも深刻な打撃を与えている。エボラ出血熱が7つの州に拡大し、感染者が8,000人を超え、死者も4,000人以上に達する中、日常的な医療データの収集そのものが困難な課題となっている。
コンゴ民主共和国保健省のデータによると、同国では毎年数万人の症例が記録されるなど麻疹(はしか)の流行が長年続いており、2026年にはこれまでに12万6,000件の症例が確認されている。さらに、モンブワルでは麻疹の初回ワクチン接種が69%減少したことが分かっている。

国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)によると、同州の医療施設では5月と6月に、4月に比べて2万3,000回分も少ない定期予防接種しか実施されなかった。この影響により、子どもたちの健康状態が悪化し、手遅れの状態で医療施設に搬送されるケースが後を絶たない。
「エボラ治療センターへ回されるのを恐れて、子どもを医療施設に連れて行きたくなかったのです」 マシカ・フラハ(Masika Furaha)、ブテンボの母親(ロイター通信の報道より)
「最悪の場合、子どもたちは非常に悪い状態で到着するため、なすすべもなくただ彼らが亡くなるのを見守るしかありません」 ムペンジ・ムンベレ(Dr. Mupenzi Mumbere)、ブテンボの小児科医(ロイター通信の報道より)
エボラ流行がもたらす長期的な健康危機と国際支援の課題
エボラ出血熱の感染拡大の一部地域では鈍化の兆しが見られるものの、全体として収束にはほど遠い状況が続いている。さらに、深刻な国際援助の削減が重なったことで、命を救うために不可欠な医薬品の不足にも拍車がかかっている。
保健医療従事者やエボラ対応に当たる機関は、恐怖心や誤情報への対策を進めているが、医療アクセスの低下や予防接種率の低迷が、今後長年にわたって同国の医療システムに重くのしかかる恐れがあると警鐘を鳴らしている。
「私たちはエボラ直接の影響だけでなく、健康、栄養、児童保護、治安に対するその間接的な影響についても懸念すべきです」
ラウル・カマデュ(Raoul Kamadjeu)、UNICEF公衆衛生緊急事態専門家(ロイター通信の報道より)