ウクライナのゼレンスキー大統領の技術顧問は14日、戦場で活用されている衛星インターネット「スターリンク」の一部ターミナルで夜間に通信速度が制限されたと発表した。同国政府は、ロシアによるミサイル攻撃のタイミングと重なる制限が防衛任務に支障をきたしていると指摘している。
スターリンクターミナルの移動速度に制限
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領の技術顧問を務めるセルヒー・ベスクレストノフ氏は14日、スペースX社が管理する衛星通信システム「スターリンク」について、一部の端末で利用制限が発生していると明らかにした。同氏によると、スペースX社は移動中のスターリンクターミナルに対し、利用可能な移動速度に上限を設けたという。
この制限について、ウクライナ軍側には事前の通知がなかった。ベスクレストノフ氏は「わが国の防衛部隊はこの制限について事前に知らされておらず、複数の任務に支障が生じた」と述べ、現場の混乱を報告した。同氏は今回の措置について「明らかに偶然ではなく、現在の政治情勢と関連している」との見方を示している。
後方支援業務への影響と通信制限のタイミング
ウクライナ政府高官はAFPに対し、今回の通信制限が同国の後方支援業務を「何よりもまず、大幅に制約される」ものだと語った。この制限は、13日夜から14日朝にかけて発生したロシアによる弾道ミサイル攻撃のタイミングと重なっている。
13日夜には、首都キーウの発電所がロシアのミサイル攻撃を受けた。ウクライナ政府高官は、通信制限がロシアの攻撃と同時期に起きていることを指摘した。スターリンクはウクライナ軍が戦場での通信手段として不可欠なシステムとして利用しており、後方支援を含む軍事オペレーションに及ぼす影響が懸念されている。
米国による支援と事前警告の欠如
ウクライナ政府高官は14日、米国がロシアによる弾道ミサイル攻撃について事前に警告しなかった事例が過去に2件あったと明かした。同高官は匿名を条件に取材に応じ、エネルギー部門を標的とした大規模な攻撃が繰り返されている現状を非難している。
同高官は、米国による事前警告の欠如と、今回のスターリンクの通信速度制限を並べて指摘した。Yahoo!ニュースの報道などでも伝えられている通り、イーロン・マスク氏が所有するスペースX社の対応や、トランプ米大統領によるエネルギーインフラへの攻撃停止の呼び掛けといった周辺情勢が、ウクライナ側の警戒感を高めている。
- 10月14日:ウクライナ政府がスターリンクの通信速度制限を公表
- 10月13日夜:首都キーウの発電所にロシアのミサイルが着弾
- 背景:トランプ氏による攻撃停止の呼び掛けと、米側の事前警告への不信感
今後の通信環境と防衛任務の不透明さ
今回の制限措置が、今後どのような形で運用されるかは不透明なままだ。ウクライナ政府は、戦場における通信の安定性が防衛任務の成否を分けると強調しており、スペースX社側との調整が急務となっている。
ロシアによるインフラ攻撃が続く中、ウクライナ側は通信インフラの確保という極めて困難な課題に直面している。戦況への影響が懸念されるなか、スペースX社や米政府の動向が今後の軍事作戦にどのような制約を加えるのか、国際社会の注目が集まっている。