イランは米軍による海上封鎖が続く中、船舶間積み替え手法を利用して一部の液化石油ガスやジェット燃料の輸出に成功していたことが、ロイターが確認した船舶追跡データや海上安全保障関係者の取材で明らかになった。7月中旬以降、オマーン湾を出航したLPGタンカーは少なくとも8隻に上るという。
イラン産LPGとジェット燃料の輸出実態
ダマスカスおよびロンドン発の報道によると、イランは近年、オマーン沖で増加しているペルシャ湾岸産油国の船舶間積み替え取引に自国の貨物を紛れ込ませる手法を活用している。米国の民間団体「ユナイテッド・アゲインスト・ニュークリア・イラン(UANI)」の分析では、7月中旬以降にイラン産LPGを積載した少なくとも8隻のガスタンカーがオマーン湾を出航した。海事情報会社シンマックスの衛星画像分析に基づけば、イラン産ジェット燃料を積載したタンカー1隻が9月にミャンマーへ到着している。ロイターの分析では、LPG輸送船8隻のうち6隻とジェット燃料輸送船は、米財務省の制裁対象となっている。
米軍による海上封鎖と例外的な通航
米中央軍は、4月13日に開始された対イラン海上封鎖について鉄壁であると強調している。封鎖は6月にいったん解除されたものの、米国とイランの暫定合意が崩壊したことを受けて7月14日に再開された。米軍当局者はロイターに対し、船舶が通過したからといって封鎖を回避したことにはならないと説明し、各船舶の書類審査を個別に行い人道目的の場合には通航を認めることもあると述べた。中央軍の13日の発表によると、直近3カ月間の封鎖期間中に商船4隻を無力化し、135隻を引き返させている。
UANIによる貨物量の推計と流通経路
UANIの上級調査アナリストであるジェミマ・シェリー氏は、封鎖を通過したのは一握りのLPG輸送船に過ぎず、大半のイラン産貨物輸送船は米軍によって引き返させられたと指摘する。シェリー氏の推計では、一部のLPGタンカーはオマーン北部のシナスやソハール沖で貨物を積み替え、別の船舶はオマーン湾内で待機した後に封鎖線を通過しており、これらLPG貨物の総量は約410万バレルに達する。こうした輸送は新たな輸出戦略というよりも機会主義的な動きであり、多くの貨物はマレーシア沖の積み替え拠点へ向かい、その後中国向けに再輸送された公算が大きい。
制裁と航空産業の低迷がもたらす余剰
調査会社ベリスク・メイプルクロフトの中東担当主任アナリストであるトルビョルン・ソルトベット氏は、少数でも石油製品タンカーを通過させられるのであれば、ジェット燃料輸出は有力な選択肢となると語る。その背景には、米制裁によってイランの航空産業が圧迫され、多くの航空機が運航停止状態にあることから、国内の製油所でジェット燃料の余剰が生じている実態がある。エネルギーインフラをめぐる緊張が続く中、限られた抜け道を突いた輸出の動向に引き続き関心が集まっている。
