ブラジル北東部に住む49歳のレンガ職人男性が、AIで生成された実在しない女性に会うため、持ち物を売ってバスで2,000km離れたミナスジェライス州ベロオリゾンテへ移動していたことが、地元メディアの報道で明らかになった。
AI生成の架空のキャラクターに会うため2000kmを移動した男性
ブラジル北東部マラニョン州の都市インペラトリスに暮らす49歳のレンガ職人の男性が、TikTok上で「Jessica Oliveira」や「Jessica Fazendeira」として知られるキャラクターを求めて旅に出た。移動のきっかけとなったのは、夫を亡くした農場暮らしの女性という設定で投稿された動画である。動画内では視聴者に向けて「農場に来て、もう一生働かなくていい」という趣旨の呼びかけがなされていた。男性はこれを自身の携帯電話の画面で確認し、農場に来るよう言われていると受け取ったという。特定の個人にあてた約束ではなく、公開動画での呼びかけだった。男性は自身の持ち物を売却してバスの切符代を捻出した。

旅の行程と現地での足取り
地元メディアの報道によると、男性は10月9日(金)にインペラトリスを出発した。長距離バスを乗り継ぎ、11日(日)にミナスジェライス州の州都ベロオリゾンテに到着した。移動距離は2,000kmに及ぶ。現地に到着した男性は、手元に持っていた写真を頼りに女性を探し始めた。住民に居場所を尋ね歩いたものの、手がかりは得られなかった。困り果てた男性は、地元のラジオ局であるRadio Itatiaiaに相談を持ちかけた。そこで初めて、その女性が実在しない存在であることを知らされた。所持金がすでに尽きており、帰郷の手段を失っていた男性に対し、市の支援によってバスの切符が手配された。男性は10月15日(木)にインペラトリスへと戻ったとされる。本人は地元メディアの取材に対し、今回の行動について後悔はしていないと語り、また別の人を探すという趣旨の意向を示している。
アカウント作成者の説明と動画の削除
架空のキャラクターを作り出した人物は、匿名でメディアの取材に応じた。G1の取材に対して、作成者は「フォロワーを集めて商品を販売するために作った」と説明している。キャラクターの設定が作られたのは2025年だという。作成者は男性との個人的な会話を否定し、男性が動画を見て「来てほしいと言われている」と独自に受け取ったのではないかと推測を述べた。第三者が動画を転用して別のプラットフォーム経由で男性に連絡した可能性があるかについては分からないとしている。社会的な反響の大きさに怯えているとも語り、当該のアカウントは10月14日に削除された。
警察の対応とオンライン詐欺に対する注意喚起
ミナスジェライス州民警察は、今回の件に関して被害届は受理していないと発表している。AI技術を用いてキャラクターを作成すること自体は犯罪行為ではないが、それを悪用して詐欺や不正な利益を得た場合には法的な責任を問われる可能性があると指摘している。当局は市民に向けて、インターネット上でやり取りする相手の身元を必ず確認するよう呼びかけている。特に、実際に会うための旅行を計画する前に、相手へ送金したり個人情報を渡したりしないよう注意を促している。