LINEヤフーの元会長・川辺健太郎氏は、AI時代における情報の信頼性確保と「推し活」の視点を取り入れた新聞の価値転換の必要性を指摘した。10月15日からの新聞週間に際し、読売新聞などの取材に対し語った。
SNS時代に求められる「人気者」という資質
川辺氏は、自身のYouTubeチャンネルで新聞記事を解説する「朝刊初見読み」を配信している。同氏によれば、AIによって仕事の高度な平準化が進む中、ビジネスパーソンには「仕事ができる人(シゴデキ)」以上に「人気者」である資質が求められるという。購買行動が「好きかどうか」に左右される時代において、SNSを通じた発信力は重要だ。また、フェイクニュースが蔓延する環境下で、ジャーナリストが裏付けを取った新聞記事を基に情報を発信することは、自身の情報発信の信頼性を担保する上でも欠かせない手段となっている。
「ヤフコメ」が目指した言論の双方向性
かつて「Yahoo!ニュース」の責任者として川辺氏が導入したコメント機能「ヤフコメ」は、既存メディアの一方的な発信に対する疑問から生まれた。新聞社が美談として報じた記事に対し、読者が批判や異なる視点をぶつけることで、言論空間に多様性をもたらすことが狙いだった。導入時には既存メディアから猛反発を受けたというが、川辺氏は今も「メディア側が読者からの批判を受け入れ、考えを柔軟に変化させていくことは、言論空間にとって望ましい」との信念を崩していない。

多様な視点を持つ「推し活」としての新聞
新聞社が今後、信頼や愛着を得るための戦略として、川辺氏は「推し活」の概念を挙げている。少子化で市場が縮小する中、事実を報じるだけでは収益維持に限界があると指摘。論説やオピニオン記事において、記者や新聞社ごとのファンを獲得するような個性を打ち出すべきだと提言した。日本の読者がモノや概念を擬人化することを好む傾向を踏まえ、各社の論調をキャラクター化してSNSで発信するなど、親しみやすい手法で多様な意見を届けることが、結果として民主主義を守ることにつながると説いている。
ジャーナリズムを専攻する学生の視点
新聞の未来については、異なる立場からの意見も存在する。神戸新聞によると、タレントで大学にてジャーナリズムを専攻する国本梨紗氏は、SNSやネットニュースが溢れる現代において、裏付けのある新聞の重要性を再確認している。国本氏は、若年層に新聞を読んでもらうためには、物価高騰やAIなど生活に直結するテーマを入り口にし、文体や見出しを軟らかくする工夫が必要だと指摘した。学生がニュースの順位付けを議論する授業などを通じ、きっかけさえあれば若者も新聞に関心を持つ可能性を示唆している。
二次創作が広げるニュースの可能性
デジタル時代における新聞の役割は、ニュースを原案とした「二次創作」へと広がる可能性がある。川辺氏は、新聞記事を基にAIでドラマや音楽を制作する動きが今後加速すると予想する。こうしたコンテンツがSNSで拡散されることで、本来ニュースに接触しない層の目に留まり、元の記事へのアクセスを促す循環が生まれるかもしれない。今後、新聞各社がファクトを担保しつつ、いかにしてAIやSNS時代の潮流に適応し、新たな読者との関係を構築できるかが、業界全体の課題となっている。