日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が主導する火星衛星探査計画「MMX」は、宇宙航空の歴史において最も野心的な計画の一つに数えられています。本計画は、日本のH3ロケットによって鹿児島県南種子町の種子島宇宙センターから打ち上げられ、火星の2つの衛星であるフォボスとデイモスを目指します。
種子島宇宙センターからのH3ロケット打ち上げと旅の始まり
MMX宇宙機は、推進モジュール、探索モジュール、帰還モジュールの3つの主要なパーツで構成されており、全長は約9メートル、総重量は約5トンに達します。探査機は打ち上げ後、約10ヶ月の旅を経て火星圏へと向かいます。
フォボスとデイモスの起源に迫る科学的意義と国際協力体制
本計画の最大の目的は、フォボスとデイモスがどのようにして誕生したのかという謎を解き明かすことにあります。火星の衛星は、火星の重力に捕捉された小惑星であるのか、あるいは火星への巨大な天体衝突によって宇宙空間に飛散した破片から形成されたものなのか、科学者の間では長年議論が続いてきました。フォボスの組成を明らかにすることで、地球などの地球型惑星が数億年前にどのような環境変化やイベントを経て形成されたのか、その進化の歴史に直接的な情報を得ることが期待されています。

この歴史的なミッションには、日本だけでなくフランスの国立宇宙研究センター(CNES)やドイツ航空宇宙センター(DLR)をはじめとする国際的なパートナーが深く参画しています。仏独が共同開発した電子レンジサイズのローバー「イデフィックス」は、フォボスの表面を移動して着陸候補地の選定をサポートするほか、NASAも通信・航行支援や科学機器の提供などを通じて協力しています。
NASAの惑星科学部門のプログラムエグゼクティブ兼科学者であるトム・ステトラー氏は、「衛星の起源を解き明かすことで、火星と地球の両方の歴史についての新たな知見が得られます。特に、数十億年前に両惑星を形作り、今日私たちが目にする世界を創り出す手助けとなった出来事についての知見が得られるのです」と述べている。
NASAのトム・ステトラー氏が指摘するように、フォボスから採取されるサンプルは、今後の科学の発展においてこれまでにない貴重なデータをもたらすものと期待されています。
フォボス表面での2度の上陸と10グラムのサンプル採取計画
フォボスは直径約20キロメートルと非常に小さく、地球の月のような球体ではなく、まるでジャガイモのような不規則な形をしています。その重力は極めて微小であり、巨大な火星の重力と隣り合っているため、探査機の着陸は極めて困難を極めます。

マッシャブルの報道によると、探査機は2028年12月以降にフォボスへの着陸を試みます。滞在はおよそ2時間半を予定しており、2つの異なるサンプリング機構を用いて合計10グラム以上の物質を採取します。
| サンプリング機構 | 開発元 | 方式・特徴 |
|---|---|---|
| Pサンプラー(空気圧式) | ハニビー・ロボティクス | 高純度の窒素ガスを噴射して地表の砂埃を容器に吹き込む方式 |
| Cサンプラー(コアリング式) | JAXA | チューブを地表の深さ約2センチメートルまで押し込み、未撹乱の地下土壌を採取する方式 |
探査機はフォボスの表面に2度着陸を行い、採取した物質を帰還モジュールの内部へと確実に収納することになっています。
2031年のオーストラリア・ウーメラ砂漠へのカプセル帰還までのスケジュール
サンプルを収納した密閉式の帰還カプセルは、火星圏を離れて地球への帰還の途に就き、2031年にオーストラリアのウーメラ制限区域にある砂漠へとパラシュートで降下する予定です。
