人工知能インフラへの巨額投資に対する市場の懸念や中東情勢の緊迫化を背景に、世界的な社債の信用スプレッドが10月23日時点で過去17ヶ月ぶりの高水準に拡大しました。米国市場における金利の上昇や、フランスの国債利回りの急上昇も重なり、投資家はリスク回避の姿勢を強めています。
AIインフラの巨額投資をめぐる債券市場の警戒感
AI技術の急速な発展に伴い、データセンターやチップの構築には天文学的な資金が必要となっています。ブルッキングス研究所の調査によると、AIデータセンターの構築には2032年までに総額10.3兆ドルが必要とされており、ガートナーは、これらのオーナーが投資を回収し適切な利益を得るためには、2030年までに8.5兆ドルの収益を創出する必要があると推計しています。この巨額な支出に対し、投資家は「技術が約束する利益が、支払期限までに実現するのか」という疑念を抱き始めています。
クレジットデフォルトスワップ(CDS)の上昇と企業の資金調達
市場の不安は、CoreWeave、Oracle、SoftBank Groupといった、AIインフラの構築に深く関与する企業のクレジットデフォルトスワップ(CDS)スプレッドの拡大に現れています。CDSは債務不履行リスクをヘッジするための金融商品であり、このスプレッドの拡大は、投資家が当該企業のリスクをより厳しく評価していることを意味します。特にCoreWeaveのCDSスプレッドは1100ベーシスポイントを超え、大幅な上昇を見せました。.
専門家からは、現在の市場の緊張状態を危惧する声が上がっています。

ナティクシスのシニアエコノミストであるGary Ng氏は「信用リスクが今、市場のトレンドを左右している」と語った。
同エコノミストは、アジア市場もこれらの衝撃から無縁ではないと分析しています。また、マッコーリー・グループのグローバルFX・レート戦略家であるティエリー・ウィズマン氏は、フランスの債務負担(対GDP比120%)と赤字削減への懸念が、欧州の信用コストを押し上げている主要因であると指摘しました。

世界的な信用スプレッドの拡大と安全資産への逃避
ブルームバーグの指数によると、10月23日時点における世界的な社債の信用スプレッドは2025年5月以来の高水準を記録しました。一部の指標ではスプレッドの拡大が最大129ベーシスポイントに達しており、市場のボラティリティが高まる中で、韓国輸出入銀行が円建て債券の発行を延期するなど、調達環境の悪化が表面化しています。
一方で、一部の投資家はこの状況を機会と捉える動きも見せています。インベスコなどは市場の変動に直面していますが、アナリストの中には「CoreWeaveの借り入れコスト上昇を理由に、テクノロジー株を売るべきではない」とする意見もあります。しかし、10月15日の市場売り越しは、投資家がAIの「可能性」だけでなく、その背後にある「資金調達の健全性」を厳格に審査し始めたことを明確に示しました。.
フランス国債の利回り上昇と今後の展望
欧州市場においては、フランスの10年物国債利回りが5%を突破し、ドイツ国債とのスプレッドは約170ベーシスポイントに拡大しました。これは、AI関連企業だけでなく、国家レベルの信用リスクに対しても投資家がより高いプレミアムを要求していることを示唆しています。
さらに、中東情勢の緊迫化がエネルギー市場に波及し、インフレ懸念を再燃させています。今後の焦点は、11月3日の米国中間選挙、12月28日の連邦準備制度理事会(FRB)の会合、および今後発表されるMicrosoftやAlphabetなどのテック企業決算に移っています。市場は、AI企業が現在の高い評価額を正当化できるだけの収益と利用実績を証明できるか、その「最初の具体的なテスト」を待ち構えています。.