金正恩総書記の死亡説はどのように拡散したのか
海外のSNSにおいて、北朝鮮の金正恩国務委員長が脳出血で意識を失い、中国・北京の病院に搬送されたのち死亡したという内容のデマが流れた。jiji.comが伝えたところによると、10月19日に中国の体制に反対する米国在住の活動家がSNSに投稿したことが発端となった。確かな根拠は示されぬまま一部メディアが取り上げ、うわさは急速に広がった。北朝鮮の最高指導者の健康情報をめぐっては、過去にも憶測が飛び交うことがあったが、北朝鮮の公式発表に先んじて他国の情報機関やメディアが正確な情報を発信できた例はない。
北朝鮮のインターネット網で発生した大規模な障害
Yahoo!ニュースのエキスパート記事によると、金正恩氏の死亡説が拡散した直後、北朝鮮のインターネット網が大規模なサイバー攻撃を受けた可能性が浮上している。米ネットワーク監視企業のケンティック(Kentik)が、20日から約32時間にわたり北朝鮮のインターネット網に向けて異常な大量通信が繰り返されたことを確認した。外務省や朝鮮中央通信など40以上のウェブサイトで接続障害が発生し、ベトナムやフィリピン、ベネズエラなどから発信された大量の通信が北朝鮮のウェブサイトの接続障害が始まった時刻と一致していたという。外部から大量の通信を送りつけるDDoS攻撃の痕跡が確認されたが、今回の障害が軍の通信網や国内の行政システムにまで影響したかどうかは現時点で不明とされている。
北朝鮮メディアによる通常の動静報道と過去の事例
死亡説が流れた後、北朝鮮メディアは平壌の衣類・靴展示会場を訪問した金正恩委員長が娘を伴って視察する写真を公開し、何ら異変を感じさせない普段どおりの報道ぶりを見せた。北朝鮮の最高指導者をめぐる死亡説は今回が初めてではなく、1986年11月には金日成主席が暗殺されたという大誤報が国際的に広がった。その際も翌日に金日成主席が平壌の空港に姿を現すことでデマが打ち消された経緯がある。近年の事例では、2014年秋や2020年4月にも金正恩委員長の健康不安説や重篤説が浮上したが、その都度公開活動の報道によって憶測は下火になってきた。
最高指導者の健康管理とサイバー攻撃の謎に包まれる実態
北朝鮮にとって「最高尊厳」の健康問題は極めてセンシティブなトップシークレットであり、外部からの実態把握は困難を極める。最高指導者の生死を巡る情報が世界を駆け巡る一方で、国家の対外情報発信を担うウェブサイトが相次いで接続障害に陥ったのは異例の事態である。通信の発信元や攻撃を仕掛けた人物、組織、その目的は明らかになっておらず、金正恩氏の死亡説とサイバー攻撃の間に関連があることを示す情報も現時点では確認されていない。
