伝統的な大手防衛企業が米軍の主要調達プログラムを独占してきた構図が崩れつつある中、米陸軍が計画する無人機「グレイイーグル」の後継機選定や米空軍の次期機体開発を巡り、防衛スタートアップが急速に食い込んでいる。
防衛スタートアップが挑む米陸軍のMQ-1C後継機計画
伝統的な大手防衛企業はこれまで米軍の主要調達プログラムを独占してきたが、現在では防衛スタートアップが急速に食い込みつつある。ゼネラル・アトミクス・エアロノートカル・システムズ(GA-ASI)が開発したMQ-9AおよびMQ-1Cの後継機を巡り、複数の新興企業が挑戦する構図となっている。シールドAIのアーマー・ハリス氏はDefense Oneの取材に対し、自社製プラットフォーム「X-BAT」について「陸軍のMQ-1C後継機、もしくは他のプログラムにとって非常に有力な候補になり得ると考えている」と述べた。
X-BATはAH-64とほぼ同じ重量であり、同氏は陸軍と多くの取り組みを進める中で「X-BAT運用に必要な後方支援規模がAH-64と非常に似ている」と示してきたという。空軍の対地攻撃任務に合致する特性を持つ一方、垂直離着陸能力が陸軍航空隊の運用形態と一致し、空軍と陸軍の間の論争に火をつけるような兆候も今のところ見られないとハリス氏は言及している。
米陸軍AUSAで明かされたVSTOL機導入計画の行方
米陸軍は12日に開幕したAUSAの場で、グレイイーグル(MQ-1C)の後継機に関する提案依頼書(RFP)をまもなく発行する予定であると明かし、強い注目を集めている。米陸軍のフィリップ・ベイカー少将は、グループ4+クラスのVSTOL機導入計画について、偵察、監視、目標捕捉任務を担う長時間滞空型の多用途機配備を目的にしていると説明した。防衛産業界から多くのフィードバックを得て現在精査を進めており、それを踏まえてRFPの手続きを進める方針を示している。
ベイカー少将は、このVSTOL機において本当に重要なのはプラットフォームではなくアーキテクチャだと指摘している。ハードウェア、ソフトウェア、センサー、通信ネットワーク、他システムとの連携能力を一つのシステムとしてどう作動させるかというシステム全体の設計構造がより重要視されており、トレンドを反映してハードウェア定義型からソフトウェア定義型へ移行する流れにある。
シールドAIとGA-ASIおよび競合企業の参戦構図
Aviation Weekの報道によれば、シールドAIはAUSAでX-Batを提案すると明かしており、GA-ASIもSTOL能力を備えたグレイイーグルの派生型であるモハベを提案すると見られている。さらにアンドゥリルが7月に発表したティルトローター式無人機であるサンダーの名前も挙げられている。GA-ASIが提案する見込みのモハベはハンファエアロスペースとの共同開発製品であり、両社は9月16日に韓国で戦場を想定したシナリオ下でのモハベ運用テストを完了した。
もしMQ-1C後継機にモハベが採用されれば、米陸軍の大型無人機調達にハンファエアロスペースが参入する格好となる。MQ-1C後継機は今のところシールドAIのX-BatとGA-ASIのモハベで争われる様相を呈している。また、米空軍が進めているMQ-9Aの後継機(MMA)についても、GA-ASI、アンドゥリル、シールドAI、ケイオス、グリッド・エアロ、オットー・エアロスペース、スウォーム・エアロの7社で競合が行われており、新興企業の台頭が鮮明になっている。
主要調達プログラムにおける独占構図の崩壊と再編
防衛市場では伝統的な大手企業の優位性が揺らいでいる。特にアンドゥリルは、ロッキード・マーティン、ボーイング、ノースロップ・グラマンを退けて米空軍のCCA第一弾調達にGA-ASIと共に選ばれ、ロッキード・マーティンとの競争に勝利して米陸軍の次世代戦場指揮システム開発契約(最大18億ドル)を受注した。さらに低コスト迎撃ミサイルでもアンドゥリルのスティールフィンとロッキード・マーティンのPAC-3 ACEが競合する可能性がある。
低コスト巡航ミサイル、極超音速ミサイル、大型無人潜水艦、自律型ミッションソフトウェアといった分野でも防衛スタートアップは大手防衛企業を圧倒しつつある。主要調達プログラムにおける独占の構図が崩れ始めている現状を受け、ウォール街からは伝統的な主要防衛企業が10年後までにバラバラに分社化されて再編されるのではないかという予想まで登場しており、今後の防衛市場における支配力は大きく変化していく見通しだ。