トランプ米大統領は14日、対イラン軍事作戦で要人を殺害した結果、交渉相手を失うという「誤算」が生じた可能性に言及した。2月に開始した攻撃によりイラン指導部が壊滅し、事態の収拾が困難となっている現状について、同氏は「やり過ぎたかもしれない」と語った。
交渉相手を失った米国の誤算
トランプ大統領は14日、西部アリゾナ州で開かれた支持者集会において、2月からイスラエルとともに進めてきた対イラン軍事作戦の経緯について触れた。毎日新聞によると、トランプ氏は「彼らには今や何も残っていない。空軍も海軍もなくなった」「指導者たちもいなくなった」と攻撃の成果を強調した。その上で、「それが問題の一つなのだ」と切り出し、「私はやり過ぎたかもしれない。誰と交渉すればいいのか分からない」と述べた。同様の発言は13日の演説でも繰り返されており、軍事的な打撃が外交的な出口を塞ぐというジレンマに直面していることが浮き彫りとなった。
軍事作戦がもたらした体制の変容
この軍事作戦では、イランの最高指導者だったアリ・ハメネイ師をはじめ、最高安全保障委員会トップのラリジャニ事務局長ら主要な指導層が次々と殺害された。トランプ政権は当初、イスラム体制の転換を視野に入れていたが、結果としてイランの体制維持を許す形となった。一方で、この過程で対米強硬派である精鋭軍事組織、革命防衛隊の影響力はむしろ強まったと指摘されている。3月に選出されたモジタバ・ハメネイ最高指導者は就任以来、公の場に姿を見せておらず、体制内部の分断が米側から繰り返し主張される状況が続いている。
経済的混乱と中間選挙への影響
一連の軍事作戦を巡っては、米側の見通しの甘さや出口戦略の欠如が以前から批判の対象となってきた。イラン側が原油輸送の要衝であるホルムズ海峡の封鎖を強行したことで、国際的なガソリン価格は高騰した。この経済的混乱は収束のめどが立っておらず、11月3日に投開票を控える中間選挙において、与党・共和党への逆風として作用している。トランプ氏にとって、イラン問題の長期化は国内の政治基盤を揺るがす深刻な要因となっており、選挙戦への影響を無視できない状況にある。
攻撃再開を巡るトランプ氏の姿勢
トランプ氏は現状、中間選挙前の攻撃再開には否定的な姿勢を見せている。戦闘が本格化すれば、苦戦が伝えられる選挙戦に対してさらなる打撃となりかねないからだ。選挙後に攻撃を再開する可能性も取り沙汰されているものの、トランプ氏自身がどのような出口戦略を描いているのかは判然としない。イラン側が徹底抗戦の構えを崩さない中、中東情勢は先行きが不透明な混沌とした状態が続いている。
- 2026年2月:イスラエルとともに対イラン軍事作戦を開始
- 2026年3月:モジタバ・ハメネイ師が最高指導者に選出
- 2026年11月3日:米国中間選挙の投開票日
不透明な先行きと残された問い
イランの指導層が排除されたことで、米国が誰を相手に交渉を再開できるのかという問いは、現時点でも答えが出ていない。軍事的な勝利を収めたはずのトランプ氏が、外交的な出口を見失ったことで、中東での関与をどのように収束させるのかは依然として不明だ。選挙を控えたトランプ政権が、この泥沼化した対立からどのように脱却を図るのか、あるいはさらなる衝突を選択するのか。現地の情勢と米国の戦略は、依然として予断を許さない状況にある。