米国国防総省が2026年12月3日に計画しているニダル・ハサン元陸軍少佐の死刑執行をライブ配信する方針に対し、超党派の議員や退役軍人から批判が相次いでいる。批判派は、この計画が「野蛮な見世物」であり、米国の価値観を損なうものだと強く反発している。
ニダル・ハサン元少佐の死刑執行計画を巡る論争
ピート・ヘグセス国防長官は、2009年にテキサス州のフォートフッド陸軍基地で13人を殺害したニダル・ハサン元陸軍少佐の死刑を、銃殺刑により執行し、その様子をライブ配信する意向を表明した。執行は、事件発生と同じ現地時間の12月3日午後1時(19:00 GMT)に予定されている。ハサン元少佐は事件当時に銃撃を受け、現在は車椅子を使用している。裁判において同被告は、アフガニスタンにおけるタリバンやイスラム教徒を米軍から守るという信念に基づき、米軍基地内で最も多くの死者を出したこの攻撃を実行したと認めていた。
退役軍人72名による中止要求の公開書簡
72名の退役将官や提督を含む高官グループが、このライブ配信計画の中止を求める公開書簡を発表した。このグループには45名の将軍、12名の提督、および複数の元法務総監が含まれる。著名な署名者には、アブグレイブ収容所での虐待調査を率いたトニー・タグバ元陸軍少将、水責めを拷問と断じたグアンタナモ収容所の元検察官モー・デイビス元空軍大佐、NASA長官を務めたチャールズ・ボールデン元海兵隊少将、そして女性初の陸軍3つ星将軍であるクローディア・ケネディ元陸軍中将らが名を連ねている。

軍の元指導者たちは、死刑制度そのものには反対していないとしつつも、公開処刑は憲法が禁じる「残酷で異常な刑罰」に該当しかねないと主張した。彼らは今回の計画について次のように警告している。
「このような搾取的な放送は、人間の尊厳を傷つけ、それを実行する軍隊とそれを許容する国家の名誉を汚すものだ。将来的に米国の兵士や市民を傷つけ、憎悪を煽るために敵国に利用され、ハサンを殉教者に仕立て上げることになるだろう」 退役軍人グループの公開書簡

議会からの反発と法的懸念
共和党のトム・ティリス上院議員は、SNS上でこの計画を「吐き気がするほどだ」と非難し、2025年にヘグセス氏の国防長官就任を承認した自身の票について後悔の念を表明した。同議員は「公開処刑はイランやアフガニスタンのような抑圧的な独裁国家が行うことだ。アメリカで起きるべきではない」と述べた。また、下院軍事委員会のメンバーである共和党のオースティン・スコット下院議員も「私は死刑には絶対賛成だが、処刑のライブ配信はジハード主義者がすることだ」と反対を表明した。
一方で、共和党のアンディ・オグルズ下院議員は「公開処刑こそがこのテロリストにふさわしい」と述べ、ヘグセス氏の決定を「素晴らしい」と称賛した。JD・バンス副大統領は、このライブ配信を「見るつもりはない」と述べるにとどめた。
ホワイトハウスと国防総省の不透明な対応
上院軍事委員会の民主党トップであるジャック・リード議員は、ライブ配信は「反米テロリストの採用担当者への贈り物」になると警告し、政権に再考を促した。リード議員は、現在の軍の規定では死刑執行の立会人は被害者家族や弁護士、報道関係者など極めて限定されており、今回の計画を実行するにはドナルド・トランプ大統領による免除の承認が必要になると指摘している。
トランプ大統領は先週、この執行を「絶対的に」承認すると述べたが、執行のライブ配信については最終決定を下していないと報じられている。連邦通信委員会(FCC)のブレンダン・カー委員長は、米国の放送局が処刑を放映するか否かについては「最終的にヘグセス長官の判断に委ねる」と述べた。国防総省の当局者は、現在「これ以上の追加情報はない」としている。また、国際連合の人権事務所の広報担当者は、このライブ配信が国際法に違反し、「公開処刑に等しく、拷問の絶対的な禁止に抵触する」と強く非難した。