防衛スタートアップのShield AI(シールドAI)は2025年10月、垂直離着陸が可能な無人戦闘機「X-BAT」の計画を発表した。米海軍などから計4億ドル(約630億円)の開発資金を確保し、年内の飛行試験開始を予定している。
米海軍とシールドAIが投じる4億ドルの開発資金
シールドAIが2025年10月に発表した垂直離着陸無人戦闘機「X-BAT」に対し、米海軍と国防総省はこれまでに計2億ドルの資金支援を行い、シールドAI側も同額を投資して総額4億ドル(約630億円)の開発資金を確保した。同社は2015年に設立されたAI技術を核とする防衛スタートアップで、通信やGPS信号が遮断された環境下で重要になる自律技術で優位性を持つ。XQ-58、MQM-178、MQ-20、FQ-44Aなどの無人機にも、同社製の自律ソフトウェア「Hivemind(ハイブマインド)」が採用されてきた経緯がある。さらに、マーティンUAVの買収を経て無人機市場へ本格参入を果たした同社にとって、今回のX-BAT開発は大きな挑戦となる。
米海軍による追加支援と輸出対応プログラムの仕組み
米海軍は既存のその他取引権限に基づく契約を変更し、新たに1億5,000万ドル(約235億円)の資金援助を行った。この資金は「Defense Exportability Features(DEF)」プログラムから拠出されている。初期開発段階から輸出を前提とした技術保護や能力調整の仕組みを組み込むための同プログラムは、50対50のコストシェアを基本ルールとして定めている。そのため、シールドAIも新たに自社資金から1億5,000万ドルをX-BATプログラムに投資する必要が生じた。これに先立つ8月に発表された国防イノベーションユニット(DIU)と米海軍からの5,000万ドルの支援と合わせ、政府側と企業側双方が同額を拠出する形となっている。
30年前の軸対称ベクトル排気ノズルを活用する設計思想
X-BATは、複雑なシステムなしでの垂直離着陸や、エンジンのアフターバーナーのみでの推力対重量比の達成を掲げる。また、搭載武器を放棄せずに垂直着陸が可能であり、武器を搭載した状態で最大3,700kmを飛行できる野心的な計画だ。一方で、採用されている技術自体は成熟したもので構成されている。垂直離着陸を実現する軸対称ベクトル排気ノズル(AVEN)は、1990年代のF-16MATV計画で使用されたものだった。シールドAIから連絡を受けるまで、このノズルはGEエアロスペースの倉庫に眠ったままだったという。コードを書き直してテストを行うと完璧に作動し、開発期間を大きく圧縮する要因となった。シールドAIのシヴァ・ヴァラバネニ氏は、プロトタイプの飛行実験を2026年末までに実現する最大の鍵になったと述べている。ただし、この30年前のノズルはあくまで開発期間の短縮が目的であり、将来的にはより軽量で高速かつ高性能なノズルが作られる予定である。
500人のエンジニアによる年内の飛行試験に向けた体制
シールドAIと主要サプライヤーには現在500人のエンジニアが在籍し、飛行試験機の建造を進めている。X-BATの実現において重要なのは新しい技術の開発そのものではなく、成熟した各技術を統合できるかどうかにかかっている。米空軍が様子見の立場を崩していない一方で、米海軍は強い関心を示しており、ビジネスとして成立させるための助走を強力に後押ししている。国防総省や米海軍からの支援を受け、シールドAIは年内の飛行試験開始に向けて着実に準備を進めている。一方で、4億ドルの資金が開発のどこまでをカバーできるのかについては、現時点で明確になっていない。市場における潜在的な顧客の確保や、海外からの関心を引き出すうえで、米海軍の関与がどのような影響をもたらすのか。