福岡県議会で強大な影響力を持ってきた蔵内勇夫前議長の辞職に伴い、県が推し進めてきた「ワンヘルス」政策を巡る公金支出の不透明な実態が浮き彫りになった。Yahoo!ニュースなどの報道で、アジア獣医師会連合の福岡オフィスに対し、県が約1億円にのぼる経費を負担していたことが明らかになっている。
アジア獣医師会連合オフィスに約1億円の公金支出
福岡市中央区の複合施設「アクロス福岡」内には、アジア獣医師会連合のワンヘルス福岡オフィスが設置されている。2023年8月の開設以来、福岡県は事務所の賃料や光熱費などを全額負担してきた。さらに、研修名目で県職員を派遣し続けている。
Yahoo!ニュースの報道によると、2026年6月までの賃料や光熱費などの総額は約6500万円に達する。加えて、2026年8月までに派遣した職員の給与総額は約4300万円であり、両者を合わせると約1億円もの公金が投じられてきた計算になる。職員の人数は2026年9月以降に1人へと削減されたものの、巨額の支出構造が長期化していた。

日本獣医師会からの要望と県の全額負担の経緯
2026年9月に開かれた県議会の決算特別委員会では、『無所属の会』の新開崇司県議がこの問題を取り上げた。新開県議は、日本獣医師会からアクロス福岡が事務所の設置候補として指定されたのかどうか、また賃料や管理費の全額負担が求められたのかを質問した。
これに対し、ワンヘルス総合推進担当課長は、日本獣医師会との間でさまざまな協議が行われ、その中で事務所の設置候補地や賃料についての意見があったことを認めた。蔵内前議長は日本獣医師会の会長を務めており、業界団体側の意向がそのまま県の財政負担に反映された形となっている。
相次ぐ優遇指摘と高額な海外視察の実態
テレビ西日本の報道によれば、事務所を巡る公金支出の問題はこれにとどまらない。2025年まで蔵内氏が会長を務めていた任意団体「九州の自立を考える会」に対し、県は議会棟1階の1室を年間使用料約56万9000円余りで貸し出しており、著しい優遇だとの指摘が相次いでいる。
さらに、2025年8月に実施された中国視察では、議会に諮らない「議長専決」によって蔵内氏が決断を下した。移動日を除く3日間のうち2日間は、県議会側に参加要請の来ていない中国獣医師会大会や日中韓の覚書調印式に充てられ、蔵内氏は日本獣医師会会長として出席していた。この視察では蔵内氏の2泊分の宿泊費を除き、総額約390万円の活動経費が県の公費でまかなわれていた。
服部誠太郎知事が表明した支援見直しの行方
一連の公金支出や強権的な運営手法に対し、県政界では厳しい目が向けられている。突然の辞職から約2カ月が経過した現在も、蔵内前議長は会見の日程すら決まっておらず、公の場での十分な説明責任を果たしていない。
こうした状況を受け、服部誠太郎知事は2026年9月の決算特別委員会で対応に言及した。服部知事は、ワンヘルスセンターの分野横断的な研究における連携の橋渡し役としての期待感を語る一方で、開設から3年が経過した現状を踏まえ、「県とともに誘致を行って頂いた各団体の皆さまのご意見も伺ったうえで、支援の見直しを検討して参ります」と述べた。巨額の税金が投入されてきたこれまでの支援体制が、今後どのように修正されるのかが注目されている。