日本語版
最新ニュース
健康

柳沢正史博士とEmmanuel Mignot博士にラスカー賞、オレキシンの発見で睡眠科学に貢献

2026年9月9日、レダ・ファウンデーションは、睡眠科学と血液凝固障害の治療法において画期的な発見を成し遂げた研究者らに「ラスカー賞」を授与すると発表した。授賞式は同年9月17日にニューヨークで開催され、各賞には25万ドルの賞金が贈られる。…

Six headshots show six different men, all looking at the camera

2026年9月9日、レダ・ファウンデーションは、睡眠科学と血液凝固障害の治療法において画期的な発見を成し遂げた研究者らに「ラスカー賞」を授与すると発表した。授賞式は同年9月17日にニューヨークで開催され、各賞には25万ドルの賞金が贈られる。

また、パキンソン病患者へのアドボカシーを通じて神経変性疾患の研究前進に寄与した俳優のマイケル・J・フォックス氏に、公共サービス賞が贈られた。

オレキシンの発見と睡眠科学のパラダイムシフト

「アルバート・ラスカー基礎医学研究賞」は、睡眠・覚醒サイクルを制御する脳内の重要な物質を独立して発見した2人の科学者に贈られた。受賞者は、スタンフォード大学医学部のエマニュエル・ミーニョ(Emmanuel Mignot)博士と、日本の筑波大学の柳沢正史(Masashi Yanagisawa)博士である。

柳沢教授はかつて、活性化物質が未知であることから「オーファン受容体」と呼ばれていたGタンパク質共役受容体(GPCR)を標的に研究を進めていた。柳沢教授は、UT Southwestern医学センター(UTSW)で20年以上にわたりフルタイムの教員として勤務しており、そこでこの受賞に至る研究を行った。現在はUTSWの分子遺伝学のパートタイム教授であり、筑波大学国際統合睡眠医学研究機構の機構長を務めている。

柳沢教授は、この研究を「一種の生化学的な釣り遠征(biochemical fishing expedition)」であったと振り返っている。ラットの脳から生化学的な手法でペプチドを抽出し、受容体との反応を追う中で、5番目か6番目にテストした受容体でヒットが得られた。その結果、2つの密接に関連するペプチドと、それに一致する2つ目の関連受容体を発見した。

これらのペプチドは、摂食行動に関与することが知られていた脳の視床下部から分泌されていた。そのため、ギリシャ語で食欲を意味する「orexis」にちなんで「オレキシン」と命名された。しかし、オレキシンの主な役割は食欲の制御ではなく、睡眠とは反対の「覚醒」を促進することであった。

柳沢教授は、機能的なオレキシン遺伝子を持たないマウスが突然倒れ、1〜2分間不動になることを発見した。脳を調べたところ、これらの動物は突然レム睡眠に入っており、これはカタプレキシー(突然の筋力低下)を伴うナルコレプシー患者に見られる現象と一致していた。

一方、ミーニョ博士は、犬に見られるナルコレプシーの一形態がオレキシン欠乏によるものであることを突き止め、その後、人間のナルコレプシーにおけるメカニズムの研究へと進んだ。柳沢教授は、両者の知見が収束したことについて「突然、非常に説得力のあるストーリーになった」と述べている。それまでの睡眠研究は、脳の一部を損傷させ、実験動物の睡眠がどう変化するかを見るものであり、「分子レベル」の研究は存在していなかった。

臨床への応用と治療法の開発

ナルコレプシーは、極度の昼間過眠や突然の睡眠発作を引き起こす疾患であり、米国では少なくとも2,000人に1人が罹患している。柳沢教授の研究は、不眠症のためのオレキシン遮断薬や、ナルコレプシー1型を治療するための新しいオレキシン活性化薬「oveporexton」の開発につながった。oveporextonは先月、米国食品医薬品局(FDA)の承認を得た。

柳沢正史博士とEmmanuel Mignot博士にラスカー賞、オレキシンの発見で睡眠科学に貢献
Photo: UT Southwestern

UT Southwesternのダニエル・K・ポドルスキー(Daniel K. Podolsky)学長は、「柳沢博士の研究は、衰弱性の睡眠障害に苦しむ世界中の数百万人を救う可能性を秘めている」と述べている。また、柳沢教授は「歴史的に主要な学術賞から比較的少ない評価しか受けてこなかった睡眠科学の分野に、このような権威ある評価が与えられたことを特に嬉しく思う」と語った。

ノーベル賞の登竜門「ラスカー賞」に日本人4人 睡眠をつかさどる物質「オレキシン」発見の柳沢正史教授ら受賞(2026年09月10日)

柳沢教授の受賞は、UT Southwesternの科学者がラスカー賞を受賞して3年連続6回目となる。過去の受賞者には、スティーブン・マクナイト(Steven McKnight)博士(2025年)、ジジアン・“ジェームズ”・チェン(Zhijian “James” Chen)博士(2024年)、そしてノーベル賞受賞者のアルフレッド・ギルマン(Alfred Gilman)博士(1989年)、マイケル・ブラウン(Michael Brown)博士(1985年)、ジョセフ・ゴールドスタイン(Joseph Goldstein)博士(1985年)が含まれる。

睡眠障害や治療に関する具体的な診断および治療については、資格を持つ医療専門家に相談してください。

世紀の大発見『オレキシン』とは?ラスカー賞・柳沢教授に聞く“睡眠”のあれこれ【報道ステーション】(2026年9月10日)
執筆者について: nipponese

Nipponese News編集部は、国内外のニュースを日本語で分かりやすくお届けします。