国連は26日、イスラエル軍がヨルダン川西岸ヘブロンで展開する軍事作戦について、民族浄化に当たる恐れがあるとして深刻な懸念を表明した。パレスチナ人武装勢力の襲撃を受けたこの作戦で、市当局によると3189人が自宅からの退去を余儀なくされている。
ヘブロンで続く軍事作戦と数千人の退去
パレスチナ自治区ヨルダン川西岸最大の都市ヘブロンで展開されているイスラエル軍の軍事作戦により、3189人が自宅からの退去を余儀なくされたと市当局が発表した。AFPBB Newsの報道によると、この作戦は総選挙を翌日に控えた23日、パレスチナ人武装勢力の男2人がヘブロン近郊の検問所でイスラエル兵2人を殺害した事件を受けて開始された。襲撃犯2人は現場での銃撃戦で死亡している。イスラエル軍は襲撃犯の居住地区であるアイン・デイル・バハ地区に進入し、住民に荷物をまとめて立ち退くよう命じた。
国連高官が指摘する民族浄化の懸念
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のボルカー・ターク高等弁務官は、イスラエルの攻撃的な軍事作戦により数千人が強制避難させられ、住宅や商業施設が破壊されたと指摘した。ターク氏は声明で、不必要かつ過剰な武力行使に当たる恐れがあり直ちにやめなければならないと訴えた。さらに、地区全体から住民を追い出し地区そのものを消し去るという脅しも民族浄化に当たる恐れがあるとして、集団的懲罰は国際法の重大な違反であると強く警告した。これに先立ち、カイロで発言したアントニオ・グテレス国連事務総長も、立ち退きや入植者による暴力の急増について、民族浄化の脅威が一段と現実味を帯びていると訴えている。
総選挙を前に激化する入植者の暴力
現地取材を伝えたTBS NEWS DIGの報道では、イスラエルの総選挙を翌日に控えるなか、ヨルダン川西岸でユダヤ人入植者による暴力が相次いでいる実態が明らかになっている。オリーブの収穫作業をしていたパレスチナ人のムーサ・アビサイフさんは、10人ほどの入植者に囲まれピストルや棍棒で一斉に殴りかかられたと語った。国連の集計では、今月12日までのわずか2週間で死傷者や物的被害を伴う入植者による襲撃は244件にのぼる。サメル・アブユニスさんは入植者の妨害で水や電気が使えなくなり、飼育していた約200頭の羊を手放すなど生活の糧を奪われた。
政権交代や選挙の行方を見つめる住民たち
ネタニヤフ首相は暴力を起こしているのはごく一部の若者だと主張し、入植拡大を掲げる極右政党と連立を組んでいる。一方、野党『ヤシャル』のアイゼンコット氏は、ヨルダン川西岸で起きているのはイスラエル政府の庇護のもとで行われるユダヤ人によるテロだと批判し、無認可の入植拠点への対応や取り締まりの強化を掲げている。しかし、人権団体『ベツェレム』は、今回の選挙で期待できるのは政策の表面的な変化にとどまる可能性があると指摘する。パレスチナ人たちは、公正や安全をもたらす新しい政府の誕生と暴力のない日常を願いながら、総選挙の行方を冷静に見つめている。