千葉県松戸市の千葉西総合病院で、夜勤中の看護師が入院患者を無断撮影し動画を共有していたことが判明しました。韓国発のVlogアプリ「setlog」を利用したこの行為は、なぜ「友達限定」の空間から外部へ流出したのでしょうか。
千葉西総合病院での不適切動画撮影と処分
千葉県松戸市の千葉西総合病院において、看護師らが夜勤中に入院患者を無断で撮影し、動画を共有していたことが明らかになりました。Yahoo!ニュースの報道によると、動画内にはベッドに横たわる患者の姿や院内の様子が収められており、「まじ暇」「つまんねえ」といったキャプションも添えられていました。病院側は事態を重く受け止め、10月10日に懲戒委員会を開催。撮影および投稿に関与した看護師2人を懲戒解雇とし、当該動画を視聴していただけの1人に対しても厳重注意処分を下しました。この動画は、同じ医療法人グループの別病院に勤務する職員がX(旧Twitter)上で発見したことで発覚しました。.
Vlogアプリ「setlog」の仕組みとリスク
動画の撮影と共有に使われたのは、韓国のNew Chat社が開発したVlogアプリ「setlog(セットログ)」です。同アプリは2025年12月にiOS版、2026年4月にAndroid版が公開されました。日本語対応をきっかけに2026年5月ごろから国内で利用者が急増しましたが、基本設計は非常に閉鎖的です。
setlogは、招待者から6桁の数字コードか招待リンクを受け取った人のみが参加できる最大20人のグループ「ログルーム」で構成されています。アプリから届く通知に合わせて撮影する仕組みであり、スマホに保存済みの動画をアップロードすることはできません。また、グループ内の動画は午前4時に自動編集され、1本のVlogとして生成される仕組みです。
仕組み上、外部からのアクセスは制限されており、加工を挟まない「ありのまま」の日常を共有するツールとして設計されています。
「閉鎖空間」から動画が拡散された経路
「友達だけ」で完結するはずの動画が、なぜ外部へ流出したのでしょうか。取材の結果、流出の背景には完成したVlogを他のSNSへ転用するアプリの機能が関わっている可能性が高いことが分かりました。setlogは完成したVlogを端末に保存し、InstagramのストーリーズやTikTokなどへ外部共有することが可能です。
今回確認された動画には、Instagramのストーリーズ編集機能で追加されたとみられるキャプションが重ねられていました。このことから、ログルームのメンバーが作成したVlogを自身のSNSに投稿し、それを目撃した第三者が保存してXで拡散したという経路が推測されます。一度SNS上に公開された動画は、アプリ内の閉鎖的な枠組みを離れ、誰でも閲覧可能な状態へと変貌してしまいます。
クローズドSNSが抱える境界線の曖昧さ
setlogのように、特定の仲間内で日常を切り取るアプリは、BeRealをはじめとする「クローズドSNS」のトレンドに合致しています。これらは加工を排し、通知のタイミングで撮影を強制することで、親密な関係性を維持するツールとして普及しました。しかし、その親密さが「身内なら何をしても許される」という心理的隙を生むリスクも無視できません。
今回のケースでは、医療現場という極めて高い倫理観が求められる場所で、私的なツールが不適切に使用されました。アプリの機能として外部共有が容易である以上、利用者がどこまでを「仲間内」と定義し、どこからを「公」と捉えるかの認識が問われます。今後、こうした閉鎖型アプリの利用における情報の境界線について、改めてリテラシーの向上が求められることになります。