日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国による協力枠組み「クアッド(Quad)」の首脳会議が11月にフィリピンのマニラで開催される予定であると、米国のマルコ・ルビオ国務長官が10月20日に訪問先のインドで表明した。10月21日付の香港SCMPなどが伝えたと、JBpressが報じている。実現すれば、2024年9月以来、約2年ぶりとなる。
マニラで開催される11月のクアッド首脳会議
日米豪印4カ国によるクアッド首脳会議は、11月16日から18日にかけて開催される東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会合に合わせて行われる予定だ。実現すれば、2024年9月に米国のデラウエア州で開催されて以来、約2年ぶりとなる。また、第2次トランプ政権発足後では初のクアッド首脳会議となる。2025年にはインドでの開催が予定されていたものの実現せず、当時はインドによるロシア産原油の輸入などを巡って米印関係が悪化し、開催への不透明感が広がっていた。さらに、トランプ大統領が多国間協力に選択的な姿勢をとっていることから、クアッドの今後を懸念する見方も出ていた。こうした中で浮上した今回のマニラ会合は、今後の枠組みの結束を示す重要な局面となる。
インド太平洋地域と重要鉱物の主要議題
主な議題としては、南シナ海を含むインド太平洋地域の情勢、重要鉱物のサプライチェーンの強化、エネルギー安全保障を巡る協力などが取り沙汰されている。中でも、南シナ海の領有権問題を巡り、10年以上にわたってフィリピンと中国の間で緊張が続き、近年さらに高まっていることから、この地域情勢が主要議題の一つとなるのは確実視されている。南シナ海は世界の海上貿易の約5分の1から3分の1が通過する要衝であり、米エネルギー情報局(EIA)によれば、2023年時点で約36億バレルの石油などの液体燃料と約40兆立方フィートの天然ガスの埋蔵量があるとされている。豊富な魚類資源や海底資源も存在し、日本や米国、フィリピン、韓国、台湾、オーストラリアなどの同盟国・パートナー国が貿易やエネルギー輸送の面で大きく依存しているため、4カ国にとっても看過できない課題である。
南シナ海をめぐる長年の緊張と中国の進出
南シナ海では、数十年にわたり中国と沿岸国の間で緊張が高まってきた。1974年には中国軍が西沙諸島を巡って南ベトナム軍と交戦し全域を支配下に置き、1980年代には南沙諸島を巡ってベトナム軍と武力衝突が起きた。中国は1980年代から南沙諸島への進出を進め、2010年代には占拠した7カ所の岩礁などを埋め立てて人工島を造成した。その中には1988年に進出した6カ所のほか、1995年に占拠したミスチーフ礁が含まれる。米軍が1991年にフィリピンのクラーク空軍基地から、1992年にスービック海軍基地から撤退して「力の空白」が生じたことも、当時の背景として重要である。フィリピンと中国の間では2012年にスカボロー礁を巡る対立から中国が同礁を事実上支配下に置き、近年はその緊張の度合いが一段と高まっている。
国際仲裁の判断とセカンド・トーマス礁の対立
フィリピンは2013年、国連海洋法条約(UNCLOS)に基づく仲裁手続きを開始した。2016年7月に仲裁裁判所は、中国の「歴史的権利」の主張や「九段線」内の海域における法的根拠を認めず、南沙諸島のいずれの地形も独自の排他的経済水域を生み出す資格を有しないとする裁定を下した。しかし、中国はこの裁定を価値のない「紙切れ」にすぎないとして受け入れを全面的に拒否している。一方、南沙諸島東部のセカンド・トーマス礁はフィリピンの排他的経済水域内にあり、座礁したフィリピン海軍艦艇BRPシエラ・マドレを拠点として海兵隊分遣隊が駐留している。中国海警局と海上民兵は中国海軍の支援を受けながら、フィリピンの補給船や漁船の活動を繰り返し妨害し、航行を阻止する行動を続けている。