モンゴル東部の自然保護区で発生した大規模な草原火災をめぐり、通信大手モビコムの日本人幹部ら13人が乗った車列が立ち入ったことが原因であると、Yahoo!ニュースや新華網などの報道で明らかになった。保護区の8割が焼失し、中国側にも延焼する事態となっている。
モビコム幹部らの車列立ち入りが引き起こした大規模な草原火災
モンゴル東部ドルノド県ハルハゴル郡に位置するヌムルグ自然保護区で、10月8日午前11時55分に最初の通報が寄せられた。新華網の報道によると、火は強い秋風にあおられて一気に広がり、保護区の8割が焼失した。現場となったのは、生態系が極めて脆弱で、立ち入りが厳しく制限されている「核心区域」だった。モビコムはKDDIの連結子会社であり、当時は通信網整備の可能性を調べるための現地視察だったと説明している。Yahoo!ニュースの伝えるところでは、車5台に分乗した13人の中には、同社の日本人幹部も含まれていた。
広範囲におよんだ消火活動と中国側への延焼リスク
消火にあたっては、複数のエリアから非常事態当局や国境警備隊が動員された。新華網の報道では、モンゴル側は60の消火チームを編成し、計606人と機材100台を投入したとされる。火勢は国境を越えて中国側にも迫り、中国当局は国境沿いに3400人を超える要員を配置して延焼を防いだ。全面的な鎮圧が確認されたのは10月16日の朝になってからである。現地は居住地から90キロ以上離れており、家畜の立ち入りもない土地だったが、トナカイやクマ、イノシシなどの希少な野生動物が生息しており、バードライフ・インターナショナルが「重要野鳥生息地」にも指定している環境への影響が懸念されている。
立ち入りの目的をめぐる食い違う説明と政府の責任追及
モビコム側は通信網のカバー範囲を広げるための調査であったと主張し、国境警備当局から正式な許可を得ていたと説明している。しかし、現地のニュースサイト「Eguur News」などの報道では、一行が狩猟や絶滅危惧種アムールイトウの釣りを目的に保護区へ入った可能性も指摘されており、真相は明らかになっていない。モンゴルのテムーレン法務・内務相は、モビコム職員と検問所の管理部門関係者の責任を厳しく追及し、国として損失を賠償させる方針を表明した。ノムトイバヤル副首相も、業務として保護区に入る必要性があったのかどうかを含めて、さらなる調査を行う姿勢を示している。
親会社KDDIのガバナンスと今後の賠償責任の行方
モビコムは人口約350万人のモンゴルで180万人の契約者を抱える最大の携帯電話会社であり、住友商事やKDDIが出資している。同社の越智康博最高経営責任者はモンゴルのテレビ局の取材に対し、謝罪の言葉を述べた上で、法律に従って自然環境の回復に責任を持って取り組む意向を示した。国際的な大規模消防の出動を招き、中国との国境地帯まで危機を拡大させた今回の事態において、巨額の賠償請求が現実味を帯びている。親会社であるKDDIのガバナンス姿勢や、現地当局による今後の調査結果に国内外の厳しい視線が注がれている。
