上院本会議での圧倒的な可決と段階的移行のスケジュール
ブラジル上院は水曜日、週休1日のいわゆる「6×1」勤務体系に終止符を打つ憲法修正案を採決に付しました。採決の結果、出席した議員の間で圧倒的な支持を集め、修正案は可決されました。
法案の正式名称は憲法修正提案(PEC)221/2019であり、上院の全81人の議員のうち49票が必要とされるところ、両ラウンドともに75票の賛成とわずか1票の反対という圧倒的な多数で可決されました。唯一反対票を投じたのは、ジャイル・ボルソナロ前大統領の下で副大統領を務めたハミルトン・モウラン上院議員でした。
大統領決選投票を目前に控えた政治的影響とルラ政権の思惑
10月4日に行われた大統領選の第一回投票では、野党の極右上院議員であるファビオ・ボルソナロ氏が得票率約47%を獲得して首位に立ち、現職のルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ氏の得票率約45%を上回る手痛い敗北をルラ陣営は喫していました。.
ルラ政権は決選投票を前に支持を固めるため、新たな燃料減税の実施、既存の補助金の延長、そして連邦政府などに対する360万以上の小規模事業者の債務免除の公約といった数々の措置を講じてきました。政治学者や調査研究者は、この労働時間の短縮が有権者の経済的な実感や投票行動に好ましい影響をもたらし、選挙戦で優位に働く可能性があると指摘しています。
6×1スケジュールを終わらせることは、単に労働時間を変えること以上の意味を持ちます。それは生きるため、休息し、家族と一緒に過ごし、子供の成長を見守り、自分自身を大切にして人生を楽しむためのより多くの時間を意味します。
ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ、ブラジル大統領
さらに、リオデジャネイロやサンパウロなどの街頭では、労働者や数百人の市民が参加する大規模な抗議活動や祝福の集会が開催され、過酷な勤務体系の撤廃を求めて声を上げました。
野党の姿勢転換と労働現場が抱える深刻な課題
これまでこの改革に慎重あるいは反対の立場をとっていた保守派や財界からも、世論の根強い支持を受けて方針を転換する動きが出ました。第一回投票で首位に立ったファビオ・ボルソナロは、広範な支持を背景に法案支持へと舵を切りました。ファビオ・ボルソナロ氏は南部での選挙運動の最中にリモートで賛成票を投じています。多くのビジネスオーナーはコスト増を懸念して反対を唱えていましたが、ボルソナロ氏の同盟者や上院議員らは、接戦となっている選挙で不利にならないよう、人気の高い法案の阻止を断念したと政治アナリストらは分析しています。なお、ファビオ・ボルソナロ氏は支援者に対し、2月に就任する新たな議会において同法案の見直しを図る可能性を示唆したとも報じられています。
労働研究者からは、過酷な勤務体系がもたらす弊害について強い警鐘が鳴らされてきました。カンピナス大学の研究センターに所属するマリルネ・オリベイラ・テイシェイラ教授らは、週6日勤務の労働者が最低限の社会生活すら営むことを実質的に阻まれている実態を指摘し、心身の深刻な疲弊を防ぐ必要性を訴えてきました。
恩恵を受ける労働者の規模と残された課題
政府の推計によると、今回の新しいルールによって3,700万人を超える労働者が恩恵を受ける見込みです。一方で、労働組合の独自推計では約2,200万人の労働者が対象になると試算されています。特に小売り、飲食、ホテル業界といった現場で働く低賃金の労働者層が直接的な恩恵を受けることになりますが、これらの層は2022年の大統領選以降、ルラ氏が支持を大きく減らしていた分野でもありました。

一方で、制度の枠外には依然として多くの人々が取り残されています。インフォーマル経済に従事するフリーランスや配達員などは今回の法改正の対象外となっており、ブラジルの労働市場が抱える構造的な課題がすべて解決されるわけではありません。
中南米全体に広がる労働時間短縮の潮流
ブラジルにおける今回の労働改革の背景には、中南米諸国全体で高まる労働環境見直しの強い流れがあります。隣国のチリやコロンビアでは、それぞれ週40時間および42時間への短縮を定めた歴史的な法案が相次いで成立しており、チリは2023年に労働法の下で給与を減らさずに週40時間労働を実現するいわゆる40時間法を可決していました。

また、メキシコにおいても、クラウディア・シェインバウム大統領が推進した48時間労働を段階的に短縮する提案が国会で承認されるなど、域内の労働組合や政府を大きく鼓舞する動きが続いています。ただし、アルゼンチンではハビエル・ミレイ大統領の下でこうした地域的な傾向とは逆行する動きも見られ、48時間労働の維持や延長が模索されるなど、国によって対応が分かれています。